研究課題/領域番号 |
26281008
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
山本 真之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所センシングシステム研究室, 主任研究員 (90346073)
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研究分担者 |
鷹野 敏明 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (40183058)
西村 耕司 国立極地研究所, 研究教育系, 特任准教授 (60455475)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大気現象 / 自然現象観測・予測 / リモートセンシング / 気象学 / 計測工学 |
研究実績の概要 |
レンジイメージングウィンドプロファイラ(RWPR)では、受信信号に混入する不要信号(クラッタ)により、風速・大気乱流の測定データ品質が劣化する。RWPRで得られる測定データ品質を向上させる、アダプティブクラッタ抑圧機能の開発に取り組んだ。アダプティブクラッタ抑圧は、サブアレイと適応信号処理を用いてアンテナビームのサイドローブパターンを制御することで、クラッタの受信強度を低下させる手法である。アダプティブクラッタ抑圧には、既設のRWPRの主アンテナと、新設した3基のサブアレイを用いる。サブアレイとして、クラッタが多く存在する低仰角方向に指向性を持ち、RWPRの主アンテナのメインビーム方向である天頂方向付近には指向性を持たないアンテナ素子を用いた。そのため、用いるアンテナ構成は、アダプティブクラッタ抑圧によりクラッタの受信レベルが低下できる一方で、受信される大気エコーの特性が変化しない特長を持つ。 主アンテナ及びサブアレイからの受信信号を受信するため、多チャンネル受信機能をRWPR用デジタル受信機に付加した。多チャンネル受信機能を付加したデジタル受信機は、汎用ソフトウェア無線機を複数用いることで、主アンテナ及び3基のサブアレイから得た受信信号のA/D変換とデジタル直交検波を行う。デジタル直交検波後の多チャンネル受信データは、ワークステーションに転送される。ワークステーションでは、スレッド処理により多チャンネル受信データのリアルタイムデータ処理を行う。 RWPRを用いた測定を実施することで、アダプティブクラッタ抑圧が有効に機能し、RWPRで得られる測定データ品質が向上することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アダプティブクラッタ抑圧機能の開発にあたり、十分な検証を行う必要が生じた。そのため、研究計画を変更することで、アダプティブクラッタ抑圧機能の検証に注力した。十分な検証を実施したことで、実用性に優れるアダプティブクラッタ抑圧機能が開発できたと考えている。 次年度にデータ解析を集中して行うよう研究計画を変更したため、現時点での達成状況はやや遅れている。しかし、今後実施する下層雲の観測では、アダプティブクラッタ抑圧を用いることで、RWPRで得られる測定データ品質を向上できる見込みである。品質を向上させた測定データを用いて、雲解像2周波レーダー(CRDR)で得られたデータ解析を効率的に実施することで、研究目標を達成したい。
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今後の研究の推進方策 |
多くの下層雲の観測事例を得るため、東京都小金井市の情報通信研究機構においてCRDRを用いた下層雲の観測を実施する。観測には、昨年度RWPRに実装したアダプティブクラッタ抑圧機能を活用する。CRDRの観測結果を用いて、下層雲の高分解能データベースを構築する。 高分解能データベースを用いて、下層雲の観測事例の解析を実施する。下層雲の観測事例の解析を通して下層雲の様態を明らかにするとともに、CRDRを用いた風速・大気乱流・雲物理量の高精度観測手法を開発する。さらに、下層雲の観測におけるアダプティブクラッタ抑圧の有用性につき、評価を進める。 本年度は、研究実施の最終年度である。本研究のまとめを行うとともに、今後の研究発展に向けた取り組みを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を変更したため、CRDRを用いた下層雲の観測を実施しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に、CRDRを用いた下層雲の観測を実施したい。未使用額は、その経費に充てることとしたい。
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