研究課題/領域番号 |
26281011
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
早川 敦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10450280)
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研究分担者 |
村野 宏達 名城大学, 農学部, 准教授 (00570798)
浅野 亮樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 研究員 (20646137)
石川 祐一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (60315603)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物地球化学 / 硫黄脱窒 / 地下水リン動態 / 微生物生態 / 形態別硫黄 / 海成堆積岩 / 細菌群集構造 / リン循環 |
研究実績の概要 |
・八郎潟干拓地原野内の地下水から高濃度リンが検出されているが,濃度変動の周期性とそのメカニズムは明らかでない. H26年度より現地地下水観測を開始しH28年度も引き続き実施した.さらに,塩水と淡水の接触の繰り返しが堆積物からのリン濃度におよぼす影響を明らかにするため,連続抽出実験を行った.その結果,地下水のSRP濃度が春から夏にかけて上昇し冬季に低下するといった周期性を明らかとした.SRPとCl-濃度の間に負の相関を認め,夏季の淡水流入によってSRPが溶出すると思われ,これには干拓地特有の水管理に伴う湖水と海水の水位差を駆動力とした干拓地地下水への淡水流入によると示唆された.また,堆積物の抽出実験では,リン濃度の周期性を再現しうる結果を得ることに成功した. ・八郎湖流域には海水のSO42-を起源とする硫化物が存在し,還元型硫黄を電子供与体とする硫黄脱窒が下層の窒素循環を制御しているかもしれない.H28年度は源流域河川の河川脇露頭の鉛直試料を採取し,脱窒能の試験,試料の化学性評価,および堆積物試料からDNA抽出を行い次世代シーケンサーを用いて真正細菌,古細菌の群集構造を決定した.その結果,還元型硫黄の多かった下層にて,チオ硫酸添加に伴うNO3-低下,SO42-上昇,NO, N2O濃度の上昇を確認し,当該層における脱窒能を持つ硫黄酸化細菌(Thiobacilus denitrificans)の検出に成功した. ・硫黄脱窒には種々の硫黄化合物の関与が指摘され,各形態の硫黄化合物の硫黄安定同位体比は硫黄脱窒の代謝過程を知る上で有用であると考えられる.本研究では,既往の定量手法を改良することで形態別硫黄の回収率の向上に成功し,この手法を用いて干拓地土壌の30 mボーリング試料の形態別硫黄の定量を行った結果,15 m位浅では黄鉄鉱が少なく,15 m以深で多くなる傾向を明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・リン溶出地点の通年サンプリングを3年間実施し,リン濃度の高い深度とそこに特徴的な水質動態も把握でき,季節変動を示すこともわかってきた. ・八郎湖の流入河川源流域において硫黄脱窒のシグナル(チオ硫酸添加によるNO3-イオンの顕著な低下,それに伴うNO, N2Oガス濃度の上昇)を観測し,当該流域における硫黄脱窒の普遍性が示唆されてきた.
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今後の研究の推進方策 |
・濃度変動の周期性が明らかになりつつある高濃度リン溶出地点において,地下水採水を引き続き通年で実施する. ・河川水と堆積物の相互作用によるリン濃度を規定する要因を解明するための室内実験を実施する. ・研究成果を学会(国内,国際)発表し,成果の一部を英文誌へ投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
河川水と堆積物の相互作用によるリン濃度を規定する要因に関して,堆積物の分析と解析に想定以上の時間を要した事,更なる分析を要することから,予定していた国際学会への参加・発表を取りやめ,次年度での学会で発表することにしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は,上記の消耗品費と学会旅費,論文校閲費に充てる.
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