研究課題/領域番号 |
26281012
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
原薗 芳信 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 客員研究員 (90137240)
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研究分担者 |
植山 雅仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60508373)
岩田 拓記 信州大学, 理学部, 助教 (10466659)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタンフラックス / 永久凍土 / タイガ / ツンドラ植生 / 温室効果 / 衛星リモートセンシング / データベース |
研究実績の概要 |
メタンは温室効果への寄与が大きく温暖化研究でその収支把握は重要である。陸域生態系は多様で不均一な上に,生成と酸化消失とが同時に生じることから,メタン生成のプロセスでさえ十分に解明されておらず,観測データの蓄積も不十分である。観測データの不足がモデル構築や温暖化予測の妨げとなっている。本研究ではアラスカのタイガ林を対象としてメタン収支の現地観測とデータの蓄積,それに衛星データを融合した広域化データベースの整備を行い,広域データと地上検証データに基づいたプロセスモデルの精緻化をめざす。
2014年度はアラスカ大学構内のクロトウヒ林を拠点(UAF)サイトとして,Alaska大学の海外研究協力者の協力を得て複合的な手法でメタン収支の観測を継続した。植生の生育期(5月から10月)の現地観測には日本から院生などが参加し,関連する以下の植生データや衛星リモートセンシングのための地上検証データを取得した。これら分光放射測定,植生情報(樹高,葉面積指数),凍土融解層深などを解析して,メタン収支モデルのパラメータ設定,検証を進めている。
エラー除去などを経た信頼性の高い補完済みUAFサイトのデータセットは,アラスカ大学のサーバーで公開中である(大阪府大ではサーバー更新中のため2015年度に登録予定)。2015年度はこれらのデータセットに他の北極域研究者から提供されるデータと総合的データとして整備するほか,連携研究者に渡して,ツンドラ生態系と放出メカニズムの異なる湖沼などを含めた広域的なメタン収収支の評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費により2014年度内にアラスカ大学現地常駐研究員を確保できたことから,精度の高い観測データを取得できた。特に,メタンフラックスについては,渦相関法と傾度法の2つの手法による連続観測データを取得できた。ノイズ除去などまだ解析途中であるが,測定手法間の相互比較により微弱なメタンフラックスを,これまで以上に高い信頼度で評価でき,前の科研費projectを引き継いでdataの確保が進んでいる。 凍土地帯の植生におけるメタン収支と関連性が高い,CO2収支の観測結果の解析とデータベース化が進み,アラスカ大学国際北極圏研究センターに,2013年までのCO2収支と微気象のデータ(品質管理済み)をデータベースとして登録した。 衛星リモートセンシングとの連携においては,夏季の集中観測(観測に大阪府大の学生が参加),および現地調査により質の高いグランドツルースデータが確保できた。
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今後の研究の推進方策 |
観測から得られた知見を組み込んでモデルのパラメータを確定し,モデルによる推定と観測結果を比較する。現地地上検証データとの比較を通じて,パラメータの改善を行う。これにより,観測で把握できない部分の理解を深める。 モデルにより,温暖化に伴う永久凍土の融解などの環境変化がメタン収支にどのような影響を及ぼすか,シミュレートする。 衛星モデルとの結合を図り,CO2 フラックス評価で得た知見を組み込み,Alaska全体の北方タイガ林におけるメタン収支を見積もる。
2013年度までJAXAのprojectにより衛星リモートセンシングの地上検証観測の支援を得ていたが,それが終了となり現地に常駐して連続観測する研究者が居なくなった。このため,連続的なデータの確保が難しくなっている。アラスカ大学の研究者との共同研究化など,対応を模索中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以後,アラスカ大学国際北極圏研究センター(UAF/IARC)に常駐する研究者が不在となるので,日本から頻繁に観測機材の保守点検,データ回収,現地グランドツルース計測を実施する必要が生じる。特に,夏季に集中しての観測が見込まれ,このために旅費を多く計上する必要があるため,2014年度で物品購入を最低限とし,2015年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
大部分は旅費として使うが,2014年度に購入しなかった消耗品,測定装置などの購入に充てる。
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