研究課題/領域番号 |
26281016
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
黒田 友二 気象庁気象研究所, 気候研究部, 室長 (80343888)
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研究分担者 |
出牛 真 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (00354499)
吉田 康平 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (10636038)
小寺 邦彦 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 客員教授 (70343887)
柴田 清孝 高知工科大学, 工学部, 教授 (50354494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気候変動 / 太陽活動 / 北極振動 / 光化学反応 / 成層圏対流圏結合 / 大気海洋結合 / マウンダー小氷期 |
研究実績の概要 |
北極振動は、北極付近を中心に極域から日本を含む中高緯度域の気候系を支配する重要な変動モードである。本研究では、太陽放射強度の黒点周期及び数百年スケールの変動が中高緯度域に与える影響を、特に北極振動の変調という観点からそのメカニズムとともに明らかにする。その目的のため、平成26年度は下記の項目について研究を行った。 1、衛星データを入力として使っている期間(1979/80~2013/14)の再解析データ(ERA-Interim)を用いて、太陽活動が高い時期と低い時に2分割し、それぞれの時期の気候的な時間発展の違いを調べたところ、成層圏からの西風偏差の下降に伴って正極性の北極振動が現れ、特に2月に最も顕著となることが分かった。 2、太陽黒点周期の紫外線変動を最大値で固定した場合にオゾンや温度に与える影響を気象研究所の化学気候モデルを使って調べ、その結果を観測と比較した。その結果、熱帯成層圏でオゾンや温度の構造を定性的には再現していることが分かった。但し、定量的にはかなり小さかった。 3、プロキシデータから推定された太陽放射スペクトルと軌道要素を与えた大気海洋結合モデルを実行し、マウンダー極小期付近に現れた持続する負の北極振動について解析を行った。その結果、北極振動は冬季に限って現れる成層圏から下降してくる東風偏差に伴って形成されることが分かった。また、同様の境界条件を与えて地球システムモデルによるマウンダー極小期の過去再現実験を行った。 4、国際プロジェクト(Chemistry-Climate Model Initiative: CCMI)に参加し、気象研の化学気候モデルを用いた長期気候実験を実施した。得られた実験結果を解析したところ、中層大気の化学的・力学的応答が観測データから得られた応答と概ね一致していることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度途中で電子計算機システムが更新されたため、地球システムモデルを用いたマウンダー小氷期のランが中途になっていること以外は、計画は概ね予定通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、以下の項目について研究を推進する予定である。 1、衛星データを用いた期間の再解析データ、衛星観測のオゾンデータ、そしてブイの観測による海面水温データを用いて、太陽活動指数に関するラグ回帰解析を実行し、太陽活動に伴う大気海洋の信号がどこからどのように生じているのかを調べる。 2、昨年度実行した大気海洋モデルランのマウンダー極小期における負の北極振動の生成原因につき、力学モデルを用いた解析を行うことによりその要因を特定する。 3、また、地球システムモデルを用いたマウンダー極小期ランを続行し、北極振動についての解析を行う。さらにその結果について大気海洋モデルの結果と比較することによりオゾンの果たす役割について調べる。また、海洋の解析から北極振動形成についての海洋の果たす役割についても調べる。 4、国際比較で得られる多数のランと気象研モデルの結果、そしてそれらを観測結果と相互に比較することにより、太陽活動による北極振動形成メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、平成26年度に予定していた出張を都合により取りやめたこと、および予定していた論文の校正と投稿が遅れたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
地球システムモデルを用いた新規実験等によって増大する予定のデータを収納するための大容量磁気ディスク装置の増設、および投稿論文の校正や出版費用等に充てる予定である。
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