研究課題/領域番号 |
26281017
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
研究代表者 |
瀬川 高弘 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, 特任助教 (90425835)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アイスコア / 古代DNA / 微生物 / 古環境 |
研究実績の概要 |
本研究では,これまでアイスコア試料に含まれる微生物のゲノム情報を用いて研究を進めてきた.これまでの研究成果として,アイスコア試料に保存されている古代微生物に対して優れたメタゲノムライブラリーを構築し,次世代シークエンサーによるゲノム配列の取得に成功したことが挙げられる.アイスコア試料に含まれる微生物密度は低く,また試料年代が古いためDNAの解読は困難であったが,この成功により古代微生物の幅広いDNA配列の取得が可能になった.確立したアイスコア試料から全ゲノム情報を解読するための技術を用いて,キルギスタンから掘削された約6000年前のアイスコア試料を用いてメタゲノムライブラリーの作成,配列解読をおこないメタゲノム解析を実地した. 次世代シークエンサーから算出される大量のメタゲノムデータから様々な微生物配列の取得,種同定および遺伝子機能の解明をおこなう情報解析のパイプラインの構築や,大量のDNAデータ処理及び大規模データベース検索を迅速に行う為にコンピュータ解析作業の最適化・並列化をおこなった.今後は,過去1万年から約千年毎の時系列アイスコア試料を用いて遺伝子解析をおこない,生物種および遺伝子の機能分布の同定を行う.微生物情報と過去の環境変動や気候イベントとの関連性を評価することを進めて行く.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アイスコアに含まれる古代・微量ゲノムを解読するためのコンタミネーションを極力排除した小数細胞からのDNA抽出法や,古代DNA試料からのメタゲノムライブラリー構築の手法の改良は予定通りできた.確立したアイスコア試料から全ゲノム情報を解読するための技術を用いて,約6000年前のアイスコア試料を用いて解析を実地した.また,メタゲノムデータからの情報解析のパイプラインを構築することができたため,研究の達成度はおおむね順調であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に続き,過去1万年から約千年毎の時系列アイスコア試料を用いて遺伝子解析を行う.コンタミネーション対策のため,クリーンルームにてアイスコア試料から無菌的にDNA抽出をおこなう.アイスコアから抽出したDNA断片に次世代シークエンサーで解読するためのアダプターを連結させ,ゲノムライブラリーの作成を実地する.調製したゲノムライブラリーをイルミナ社の次世代シークエンサーによる配列解析をおこない,ゲノム配列の取得をおこなう.採取した試料から得られる数百ギガ塩基以上のゲノム配列をゲノム・遺伝子データーベースと比較し種推定や機能付をおこなう.また氷床コアから過去のDNAを採取するので,サンプリング及びDNA抽出時に未知なものを含めて多様なノイズが発生し,それらを高感度・高特異的に除く手法を引き続き開発する.古代環境メタゲノム用に最適化されたアルゴリズムを実装した計算システムを用いて,産出されるDNAデータを解析し,生物種および遺伝子の機能分布の同定を行う. 過去の環境変動や気候イベントとの関連性の解明をおこなう.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の結果より,予期し得なかった新たな知見が得られたために、当初執行計画を変更する必要が生じ、このためにかなりの時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプル数を増やした精度の高い微生物解析をおこなうため,アイスコア処理(コアカットとクリーニング,融解,分注),新型シーケンサーでの解読費用,ゲノム増幅試薬,計算サーバー,および分析用各種試薬類などの消耗品などを購入予定である
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