研究課題/領域番号 |
26281022
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大野 みずき 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70380524)
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研究分担者 |
續 輝久 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40155429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物影響 / 生殖細胞変異 / DNA修復 / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
野生型生物での自然突然変異率は極めて低いことからその検出は容易でないく、特に哺乳動物の世代当りの遺伝性変異の種類、頻度、誘発機構については未だ不明な点が多くリスク評価の際の指標も定まらない。種々のゲノム変異を網羅的に高感度に検出するシステムを構築するために、自然突然変異率が野生型の数倍に上昇したDNA修復機構欠損マウスの親仔サンプルを利用する。当該年度は、以下の項目について①DNA修復機構欠損マウス家系の作成と維持:Msh2遺伝子のホモ欠損マウス同士の交配を行い複数の仔を得た。親および仔のゲノムDNA抽出用組織サンプルを保存した。②遺伝性変異の解析:Msh2遺伝子欠損マウスの両親および仔のトリオのゲノムDNAを用いて、アジレント社のSureSelect Mouse All Exon kitにて全エクソンをキャプチャーし、 HiSeq2000によりシーケンスを行った。マウスリファレンスゲノム配列との比較によりコールされた変異について、親で検出されず、仔でのみ検出される変異を新規生殖細胞変異候補とした。さらにこれらの変異候補サイトについて、サンガー法などによりシーケンスを確認する作業を行う予定である。③染色体構造変異の解析:Msh2遺伝子欠損マウスの両親および仔のトリオのゲノムDNAを用いて、染色体レベルでの欠失、挿入などの構造変化やアリル数変化、配列コピー数の変化を解析するために、Array CGH解析を行った。現在結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の実験計画であるDNA修復欠損マウスの親仔、または家系の作製、および組織サンプルの保存に関して、おおむね計画どおりに進んでいる。ただしMsh2遺伝子欠損マウスどうしの交配では、生育可能な仔が得られる率が低く、これまでのところ家系は作製できていないため「おおむね順調に進展している」を選択している。当該年度は保存したサンプルの一部を使用して、次世代シーケンサーによるシーケンス解析を行い、新規生殖細胞変異候補を検出する事ができ、暫定的にではあるが世代あたりの変異率や変異のスペクトルを知ることができた。また、ArrayCGHにより塩基置換や数塩基までの欠失・挿入変異以外にもコピー数が変動している可能性を見出し、ミスマッチ修復系の欠損により、生殖細胞系列に於いても体細胞変異に類似したゲノム変異が生じている可能性を明らかにできている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究の進展により、DNA修復遺伝子欠損マウスの親仔サンプルを用いての全エクソーム解析により、一世代で新たに生じた変異を検出できる事が明らかになったので、さらに詳細な解析を進め、変異候補の中から実際の新規生殖細胞変異を同定し、世代あたりの変異率を算出する。また解析数をさらに増やしてデータの信頼性を高くする。ミスマッチ修復経路以外のDNA修復経路が生殖細胞変異に及ぼす影響についても同様の手法を用いて解析する。
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