研究課題
平成28年度は、小核形成を起源とする染色体不安定化メカニズムの解明に向けて、1)X線、又は薬剤で形成された小核の運命、並びに2)X線被ばくさせた小核由来染色体の不安定化という2つの視点から解析を進めた。まず、小核の運命に関しては、ヒストンH3をmcherryで蛍光ラベルして核を視覚化したマウスm5S細胞を用いて、紡錘糸形成阻害剤ノコダゾール処理、及びX線(2Gy)照射により誘発した小核に着目してライブセルイメージングにより解析した。その結果、ノコダゾール誘発小核では、10個のうち2個(20%)が次の分裂期で主核に再取り込みされたのに対し、X線誘発小核では、35個のうち主核に再取り込みされたものは無かった。この相違は、ノコダゾール誘発小核が主に1本のラギング染色体全体から構成されるのに対して、X線誘発小核は主に染色体断片から構成されることに原因があると推定される。そこで次に、ノコダゾール(100ng/mL,6h)処理により、分裂期で同調したm5S細胞に、細胞周期の進行ともに生じるDNA2本鎖切断(DSB)陽性小核の数を解析した。その結果、主核のDNA合成が進行するのに伴い、DSB陽性小核数が増加することが明らかとなった。そこで、DSBを蓄積した小核が主核に取り込まれることによる染色体不安定化について調べるために、X線(4Gy)照射した小核をG1期、またはS/G2期に同調したマウスm5S細胞に移入して染色体不安定化を解析した。その結果、X線被ばく染色体の不安定化に移入細胞周期による影響はみられなかったが、被ばく染色体の中には複雑な染色体内再構成を示す例が見られた。以上の本研究の成果は、ラギング染色体由来の小核内に蓄積したDSBが主核に取り込まれると、がん細胞にみられるchromothripsisのような複雑な染色体内再構成が引き起こされる可能性を示唆している。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Angew. Chem. Int. Ed
巻: 55 ページ: 10612-10615
10.1002/anie.201603230
http://chokai.riast.osakafu-u.ac.jp/~housya6/graduate.html