研究実績の概要 |
DNA損傷修復蛋白質である53BP1は、Tudor domainを介してDNA二重鎖切断部位に出現するメチル化ヒストンH4(以下H4K20me2)と結合し、DNA二重鎖切断部位に集積する。我々は、ヒトT細胞系白血病細胞株Jurkatにスタウロスポリンでアポトーシスを誘導すると、①53BP1がカスパーゼ依存性に60 kDaのC末断片になること、②この53BP1C末断片が、クロマチンと共に細胞表層へ露出すること、③クロマチンの細胞表層露出が、部分的ではあるが53BP1依存性であることを見出した。 アポトーシス細胞において、クロマチンを含めた核内物質の移動には、微小管、アクチン/ミオシン、ROCK1/2が関与するといわれている。そこで、これらの分子が、53BP1C末断片の細胞表層露出に必要か否かを、それぞれに対する阻害剤を用いて調べた。微小管重合阻害剤としてNocodazole, アクチン重合阻害剤としてCytochalasin D, ROCK1/2阻害剤としてY27632を使用した。53BP1の細胞表層露出は、微小管重合阻害剤、ROCK1/2阻害剤で抑制されたが、アクチン重合阻害剤では抑制されなかった。細胞膜近傍までの53BP1の輸送には微小管が、細胞膜内への取り込みにはROCK1/2が必要なのではないかと予想している。
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