研究課題
地球環境への関心が急速に高まりつつある中で、社会活動にともない放出された化学物質の環境への負荷を的確に評価することは火急の課題である。特に人を含めて生態系を構成する生物に対する影響を評価するためには、単なる環境中の化学物質の分析・定量ではなく、生物を利用した簡便かつ的確に評価するための手法の開発が重要である。そこで本研究では、環境指標生物およびヒトにおける化学物質の影響を、簡便かつ的確に評価するシステムの構築を目的とする。このためにミジンコ(Daphnia magna)を対象として、遺伝子工学的手法によりヒト型核内受容体遺伝子とその応答システムを組み込んだin vivoレポーター系を作製する。低用量で作用する化学物質の多くは核内受容体を介して作用することが知られていることから、ヒト型核内受容体をミジンコ内で機能させ、蛍光タンパク質をレポーターとしてその応答を検出する。これにより、化学物質の環境指標生物への影響評価と同時にヒトへの影響評価の基礎的な情報の取得を目指す。化学物質の前処理も不要でリアルタイムのモニタリングが可能なため、簡便かつ迅速なバイオアッセイ系となるのみならず、内在性のホルモン系が異なることから高い SN 比での化学物質影響評価期待できる。このため今年度はまず内在性のホルモン活性を検出するための遺伝子を導入したミジンコを作製した。さらに一連の研究を効率的に行うために、遺伝子操作に必要なゲノム編集技術の開発もあわせて行った。
2: おおむね順調に進展している
ゲノム編集に必要な技術開発については、おおむね順調に進んでおり、研究計画に記載したattPを用いた遺伝子導入技術の開発にも成功している。またミジンコに導入予定のヒト型核内受容体の遺伝子構築も順調に進展している。
昨年度の研究を継続し、ゲノム編集技術のさらなる開発を行い、効率的な遺伝子改変法の確立を行う。並行して予備的に進めている内在性ホルモンのバイオモニタリング系については、その検出感度などの評価を行う。また現在構築中のヒト型核内受容体については、これをミジンコに導入した系の確立を目指す。
今年度末に急遽研究室を移転することになり、移転準備等により予定していた消耗品等の購入を控えた。また年度末に予定していた海外での国際学会での発表も移転により中止したことにより、次年度使用額が生じた。
移転が年度末に終了したため、購入を控えていた消耗品等を発注する必要があり、次年度に速やかに、物品費を中心として、適切にしようする。
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