研究実績の概要 |
本研究は、化学物質の暴露経路(標的臓器・組織:肝臓、小腸、肺及び皮膚)を考慮した包括的in vitroリスク評価法の開発を目指す。 本年度は、ヒト肝臓における異物代謝酵素関連遺伝子発現量の個人差に関する研究を遂行した。10名の正常ヒト(男性)肝臓由来Total RNAをMultiScribe Reverse Transcriptase (Applied Biosystems) を用いてTotal RNAからcDNAを合成した。異物代謝酵素関連遺伝子としてシトクロムP450(CYP)13分子種(CYP1A1, CYP1A2, CYP1B1, CYP2B6, CYP2C8, CYP2C9, CYP2C18, CYP2D6, CYP2E1, CYP3A4, CYP3A5, CYP3A7, CYP3A43)について、その発現量をReal-time PCRにより定量した。まず、初期鋳型量の補正に適したControl遺伝子を選択する目的で、GAPDH及びβ-actin mRNA、18S rRNAを定量した。その結果、本実験で用いた試料に関しては、試料間における定量値の変動が比較的少なく、かつmRNAの品質の差異を補正し得るControl遺伝子としてβ-actinが適切であることが確認されことから、β-actin mRNAの定量値を用いて初期鋳型量の補正を行った。本研究で解析の対象とした13遺伝子については、その発現レベルに3.7倍から136倍の個人差が認められた。これまでに遺伝子発現量に比較的大きな個人差が存在することが報告されているCYP1A1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A7についてはそれぞれ31倍、12倍、48倍、136倍の差が認められたほか、CYP1A2, CYP3A43については8倍、CYP2C8では6倍の差が認められた。
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