研究課題/領域番号 |
26281039
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福島 武彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90124354)
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研究分担者 |
日比野 忠史 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50263736)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 湖沼 / 底質 / モデル化 / ポリミクティック / 石炭灰造粒物 / 栄養塩溶出 |
研究実績の概要 |
1.現地調査 霞ヶ浦、北浦を対象として、底質コアサンプルを採取して、1)間隙水中のリン、窒素、鉄、などの濃度、2) 底質のリン画分の含量、3) 放射性セシウム濃度、などを測定した。この結果、底質からのリン溶出時において、間隙水中のリン濃度勾配と溶出量は明確な関係を有していないこと、分画成分としてはCBD画分、すなわち鉄の酸化還元により態変化するものが多いこと、底質10cm程度まで風波により混合が生じていること、などを明らかにした。また、センサーによる測定システムを構築した。 2.室内実験 底質コアサンプルを多数採取して、泥厚を変化させ、20日程度の静置溶出実験を行った結果、泥厚2cmと5, 10, 15, 20cmで溶出するリン量に違いが見られなかった。実験後の間隙水、底質濃度、分画リン濃度を初期値と比較して、リンの物質収支を算定したところ、底質表層0-2cmのCBD画分、有機態画分のリンが主に溶出したことがわかった。 3.モデリング 底質サブモデルを構築し、水中生態系モデルとの結合を行った。霞ヶ浦、琵琶湖でのデータをもとに、各種パラメータのキャリブレーションを行い、長期水質・底質シミュレーションが可能であるかを検証した。また、近年の放射性セシウムの放出事故結果をシミュレーションすることから、底質の鉛直混合の程度を再現した。 4.石炭灰造粒物を用いた実験 霞ヶ浦環境科学センターの屋外実験層を借用して下記の実験を行った。直径約50cm、深さ約80cmの容器を7つ用意し、霞ヶ浦底泥、石炭灰造粒物、ろ過湖水を異なる条件で積み重ね、約半年間、上層水の水質を定期的に採取して、栄養塩、無機イオン、重金属濃度を測定した。好気、嫌気状態の違いによる栄養塩や重金属の溶出量の違いなどを中心に解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査、室内実験、モデル化、石炭灰造粒物を用いた実験とも、ほぼ計画通りに進行している。室内実験においては、底泥厚さの違いによらず溶出量がほとんど変化しない、石炭灰造粒物を用いた実験では、嫌気になりにくい時期での実験となったため石炭灰造粒物がある方がリン溶出量が大きかったなど、当初の予想と異なる結果が得られたものの、こうした結果は機構解明、浄化対策の検討において重要な知見を与えるものである。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査、室内実験を繰り返し実施することから、水ー底質の相互作用を詳細を明らかにする。また、検証を行ったモデルを用いて、そうした相互作用を正確に再現しつつ、長期水質変化を予測する。石炭灰造粒物を用いた実験に関しては、初夏に実験をスタートさせ、嫌気状態下でのリン溶出機構ならびに石炭灰造粒物の影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査、実験の一部が遅れ、そのための物品費購入、人件費の使用が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は現地調査、屋内実験とも、4月早々から開始予定であり、また石炭灰造粒物を用いた実験も5月には開始することから、昨年度の使用残を今年度初めの部分で使用する予定である。
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