研究課題/領域番号 |
26281041
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池 道彦 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222856)
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研究分担者 |
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
黒田 真史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20511786)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 芳香族化合物 / ウキクサ / 植生浄化 / 根圏微生物 |
研究実績の概要 |
根圏より単離した細菌の分類学的特徴付けと芳香族化合物分解特性の解析に注力した。大阪大学吹田キャンパス内の池より環境水を採取し、孔径10μmのフィルターでろ過することで、粗大粒子を除き、水試料を得た。滅菌した三角フラスコ中の水試料に無菌化したウキクサ(Spirodela polyrrhiza)を植え付け、人工気象器内で3日間栽培し、水試料中の細菌をウキクサに付着させた。栽培後のウキクサをホモジナイズした液、ウキクサ培養前の水試料、及び培養後の水試料をそれぞれ適宜希釈してR2A寒天培地に塗布し、28℃で1週間培養した。得られたコロニーを純化し実験に用いた。続いて、単離した細菌から市販のキットを用いて抽出したゲノムDNAを鋳型とし、プライマーセット27F及び1392Rを用いたPCRにより16S rRNAを増幅した。それらの塩基配列を決定し、NCBI BLASTによる解析することで菌株の同定を行った。 その結果、ウキクサ培養前の水試料及びウキクサ培養後の水試料からはそれぞれ17株、ウキクサのホモジナイズ液からは10株、合計44株の細菌株が単離された。ウキクサ培養前の水試料には5つの綱に属する細菌がほぼ均等に含まれていた一方で、ウキクサ培養後の水試料ではAlphaproteobacteria綱に属する細菌が多く含まれ、また、ウキクサのホモジナイズ液からはBetaproteobacteria綱細菌が多く単離された。特に、ウキクサ培養後の水試料からは芳香族化合物分解が多く報告されているSphingobium属やNovosphingobium属の細菌が多く単離されたことから、これらの菌株の芳香族化合物分解能力とウキクサとの共生関係について詳細に検討することで、ウキクサによる芳香族化合物分解細菌集積メカニズムの一端が明らかになるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウキクサによる芳香族分解活性化機構のモデルとなり得るSphingobium属細菌やNovosphingobium属細菌を単離し、活性化機構の解明に向けた手がかりとなるデータが得られつつあることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウキクサ根圏に集積する細菌群集の特徴とその芳香族化合物分解特性について、細菌の単離を基にした培養法と遺伝子を指標とした非培養法の両方を用いて解析し、それらを総合してウキクサ根圏の細菌群集の特性を明らかにする。 1.培養法によるウキクサ根圏細菌の特徴付け 根圏に集積された細菌群集より単離された細菌の同定と芳香族化合物分解特性の解析を行う。各菌株をフェノール、クレゾール、4-tert-ブチルフェノール、または各種ビスフェノール等の芳香族化合物を含む無機塩培地中で好気的に培養し、経時的に各芳香族化合物の濃度をHPLC、TOCを用いて測定するとともに、菌体濃度を分光光度計を用いて測定する。各菌株の培養液からゲノムDNAを抽出し、各菌株の16S ribosomal RNA遺伝子(16SrDNA)配列、catechol 1,2-dioxygenase(C12O)、catechol 2,3-dioxygenase(C23O)遺伝子をPCR反応により増幅し、配列を決定する。 2.非培養法によるウキクサ根圏細菌群集の特徴付け 根圏に集積された細菌群集のDNAを鋳型としたPCR反応により、16SrDNAの可変領域、C12O遺伝子、及びC23O遺伝子をそれぞれ増幅する。Ion PGM Template OT2 400 Kit、Ion OneTouch 2 system、Ion OneTouch ES(Thermo)を用いて試料の調製を行った後、Ion PGM sequencerを用いて配列決定を行う。得られる16SrDNA可変領域の配列から群集に含まれる細菌を定性・定量するとともに、C12OおよびC23O遺伝子の配列から芳香族分解に関わる機能遺伝子群の多様性を評価する。
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