研究課題/領域番号 |
26281053
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
村岡 洋文 弘前大学, 北日本新エネルギー研究所, 教授 (20358146)
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研究分担者 |
井岡 聖一郎 弘前大学, 北日本新エネルギー研究所, 准教授 (40598520)
上田 晃 富山大学, その他の研究科, 教授 (90456799)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地熱探査 / 断裂 / 断層 / 珪化帯 / 安定同位体 / 地熱開発 |
研究実績の概要 |
本研究では青森県下北半島のむつ燧岳地域や周辺の本州北端の地熱フィールドにおいて、開発リードタイムが長い地熱発電に関して、水の安定同位体測定を中心に、その地熱探査過程を飛躍的に短縮するための地熱探査手法を研究開発することを目指す。また、調査結果を蓄積して、むつ燧岳地域の実際の地熱開発に貢献することを目指す。 平成27年度には、むつ燧岳の侵食カルデラ(上村・斎藤、1957)のカルデラ底に露出する火山基盤の新第三系が、マグマの浅部貫入に伴って隆起し、ドーム状構造をつくっていることを見出した。これは新第三系薬研層頁岩層の厚さ200m以上の厚層が、環状に分布していることから確認された。このことから、平成26年度に発見したむつ燧岳東麓断層はむつ燧岳の隆起に伴う局部伸張応力によって形成された比較的若い正断層の可能性が高く、火山体崩壊の一要素となっている可能性がある。むつ燧岳東麓断層沿いの、とくに上盤側(東盤側)の薬研層頁岩層は著しく珪化変質しており、この断層がむつ燧岳を熱源とする高温熱水の上昇を規制していたことを示している。 むつ燧岳地域において、本格的な水の水素と酸素の安定同位体調査を進めるための基礎的バックグラウンドデータとして、標高の異なる6地点において、季節ごとに降水を採取し、降水の標高効果とその季節変化とを観測した。また、むつ燧岳には大赤川と小赤川という2つの主要河川が存在するが、これらに沿った河川水、湧水、温泉水を多数採取して、主成分や水素と酸素の同位体組成を分析している。現在までに、これらの水試料80個以上を分析して、地下水流動モデル・熱水流動モデルを作成中であり、速攻的地熱探査手法を開発中である。 平成27年度から、むつ市はむつ燧岳地域において、JOGMEC助成の地熱資源開発調査を開始し、本研究グループは連携協定にもとづいて、むつ市と情報交換のための研究会を2回開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はむつ燧岳等の地熱フィールドにおいて、一つは速攻的地熱探査法を開発することにあり、いま一つは実際に当該地熱フィールドの具体的地熱開発に貢献することにある。 前者の目的については、1年目の夜間熱赤外放射温度測定や、2年目の両岸からの光ファイバー温度計河床測定などを立案していた。ところが調査地域に入ってみると、きわめてアクセス困難な地域であることが判明した。そのため、河川表面の夜間撮像や両岸からの河床スキャンニング測定は、実施困難と判断された。よって、これらの購入を辞め、分析機器の充実のみを進めることとした。むつ燧岳地域において、本格的な水素と酸素の安定同位体調査を進めるためのバックグラウンドデータとして、標高の異なる6地点において、季節ごとに降水を採取し、標高効果とその季節変化を観測している。また、むつ燧岳には大赤川と小赤川という2つの主要河川において、河川水、湧水、温泉水を多数採取して、主成分や水素と酸素の同位体組成を分析している。現在までに、80個以上の水試料を分析して、地下水流動モデル・熱水流動モデルを作成中であり、速攻的地熱探査手法を開発中である。つまり、前者の目的についてはおおむね順調に進展していると言える。 後者の目的については、図らずも平成26年度の調査初日に最も重要なむつ燧岳東麓断層を発見することができた。次いで、平成27年度には、むつ燧岳の火山基盤の隆起を物語るドーム状構造を見出した。むつ燧岳東麓断層沿いの、とくに上盤側(東盤側)の薬研層頁岩層は著しく珪化変質しており、この断層がむつ燧岳を熱源とする高温熱水系の上昇を規制していたことを見出した。後者の目的については、予想を上回る成果を上げることができた。さらには、本研究の先導的役割をベースとして、むつ市がJOGMEC地熱資源開発調査を開始した。よって、全体として、順調に達成されていると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
実際にむつ燧岳の調査地域に入ってみると、きわめてアクセス困難な地域であることが判明した。そのため、「熱赤外サーモグラフィ装置」による河川表面の夜間撮像や、「光ファイバー温度計」による両岸からの河床スキャンニング測定については、実施困難と判断された。よって、現地事情に合わせて、「熱赤外サーモグラフィ装置」や「光ファイバー温度計」の購入を辞め、分析機器の充実のみを進めることとした。しかし、速攻的地熱探査法を開発するという目的を果たして行く所存である。平成27年度からは、むつ市がむつ燧岳地域において、JOGMECの助成による地熱資源開発調査を開始した。そのため、本研究グループは弘前大学北日本新エネルギー研究所とむつ市との連携協定にもとづいて、情報交換のための研究会を2回開催している。今後は両機関が協力して調査を進めることが可能になった。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時の予想と異なり,調査対象のむつ燧岳地域が非常にアクセスが困難であり、藪漕ぎによって、ようやく河川に辿り着ける状況であることが判明した。そのため、「熱赤外サーモグラフィ装置」による河川表面の夜間撮像や、「光ファイバー温度計」による両岸からの河床スキャンニング測定については、ほとんど実施困難と判断された。よって 、現地事情に合わせて、「熱赤外サーモグラフィ装置」や「光ファイバー温度計」の購入を辞め、分析機器の充実のみを進めることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の理由により、平成26年度と平成27年度の繰越し予算分を、平成28年度予算の備品費と合わせて、「水素ガス分析用ガスクロマトグラフ」(SRIインターナショナル社製)の購入に充当することとした。
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