研究課題/領域番号 |
26281061
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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研究分担者 |
堀井 伸浩 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10450503)
Thiesmeyer Lynn 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (20230881)
藤川 清史 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (60190013)
伴 ひかり 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国 / エネルギー / 炭素リーケージ / 周辺国 |
研究実績の概要 |
平成27年度に掲げた研究項目のうち,(2)の中国の環境・エネルギー政策実施上の障壁の克服困難度の分析に関しては,4つの点を明らかにした.第1に,2000年代中葉以降一連の石炭価格規制の緩和政策は,石炭価格を上昇させ,エネルギー転換を容易にした.第2に,2015年上海株式市場での株価急落等によって明らかになった経済成長鈍化と石炭価格の低下,それに伴う石炭の競争力の回復が,短期的にはガスへのエネルギー転換の強い障壁となっている.第3に,ロシアからのガス輸入の拡大とロシアのガス田開発への参入の確保,第13次5カ年計画で示した大気汚染対策としての石炭依存度の低下政策とガスの発電所利用の推進策,及び近年の低価格の再生可能エネルギーの導入は,中長期的には,環境・エネルギー政策実施上の障壁を緩和していく.第4に,炭素税は都市部・農村部ともに強い逆進性を持つようになった. 研究項目(3)の中国の環境・エネルギー政策のエネルギー輸出国への影響に関しても,4つの点を明らかにした.第1に,2009年時点では中国は依然として世界の工場として,他国の消費のために自国の水消費や炭素排出量を増やしていること,しかしその増え方はかなり低下しており,近い将来炭素リーケージを起こすようになる.第2に,各国が約束草案を達成するように価格付け政策を実施すると,中国は厚生が大きく下がり,また2030年にはアジア地域への炭素リーケージ率は8%となる.第3に,インドネシアは中国への主要石炭輸出国となる一方で電気電子産業の国際競争力を低下させる等,「資源の呪い」の兆候を見せているが,経済・資源データによる分析では「資源の呪い」は表面化していない.第4に,中国のミャンマー国内及びミャンマー国内を流れる河川の上流へのダム建設は,中国の西南部の電力需要を満たす一方で,ミャンマーの農地の生産性を低下させている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に掲げた研究項目のうち,(1)中国が現在公表済みの炭素排出削減目標達成手段の実施によるエネルギー需給の分析は,計画通り完了した. 研究項目(2)の中国の環境・エネルギー政策実施上の障壁の克服困難度の分析に関しても,中国の石炭価格改革と脱石炭化政策,大気汚染対策,ガス輸入の拡大と国内利用普及政策,炭素税の所得分配効果が障壁に及ぼす影響についての基本的な分析・検討はほぼ終了した. また研究項目(3)中国のエネルギー・気候変動政策の変化が周辺のエネルギー輸出国に及ぼす経済・環境影響の解明に関しては,中国の内包炭素排出量・水資源消費量の分析はすでに完了し,アジア地域全体を対象としたシミュレーション分析はほぼ終了した.石炭輸出国インドネシアへの影響も,主要な分析はほぼ終了している.
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今後の研究の推進方策 |
第1に,これまで主要な分析を完了した研究内容について,東アジア環境資源経済学会(EAAERE)等の国内外の学会や中国の研究者を交えたワークショップ等で報告を行い,フィードバックを受けて,論文を作成する. 第2に,ミャンマーにおける,中国の電源開発に伴う社会・環境影響調査について再度住民を対象とした現地聞き取り調査を行い,論文にまとめる. 第3に,トルクメニスタンへの経済・環境影響について,インドネシアを対象とした分析と同様の「資源の呪い」の分析枠組みを用いて分析を行う. 第4に,中国に石炭輸出を行ってきたオーストラリアについて,中国の景気減速に伴う輸入減少の影響を定性的に分析する. 第5に,これらの分析を英語論文にまとめ,英語の書籍としての出版を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
中国での排出枠取引の打合せと現地調査は,予定していたカウンターパートとの日程が合わず,ワークショップ形式での打合せを行うことが困難であったこと,そのために取引制度への対応に関するデータのが困難となったため,調査を断念した.その分をインドネシアでの影響の調査に使用することで,研究を進展させたものの,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
第1に,東アジア環境資源経済学会での英語での口頭報告と,その後の英文著書の出版に向けての英文翻訳及び校閲に充当する. 第2に,研究成果に対するフィードバックを受けることを目的に中国・北京で開催を計画しているワークショップへの出張旅費に充当する.
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