研究課題/領域番号 |
26282001
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
平賀 瑠美 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (70327021)
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研究分担者 |
寺澤 洋子 筑波大学, 図書館情報メディア研究科(系), 助教 (70579094)
松原 正樹 筑波大学, 図書館情報メディア研究科(系), 特任助教 (90714494)
田渕 経司 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80361335)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音楽認識 / 聴覚障害 / トレーニング |
研究実績の概要 |
本研究課題ではタッピングゲームと音楽を集中して聴くことを求められるゲーム(ミュージックパズル)を実験で使用する.ミュージックパズルは,連携研究者である,スウェーデン王立工科大学のK. F. Hansen博士が主として開発しており,10月に博士を研究代表者が訪問し,H29年度の長期実験に関する話し合いを進め,次年度の長期実験実現に向け,実験開始前・途中・終了直後それぞれにおいて行う聴取のテストの内容,ならびに"長期"という場合,実験の妥当な時間について確定した.人工内耳に関する国際シンポジウムに参加,ミュージックパズルの短期使用実験において健聴者と聴覚障害者を比較した内容についてのポスター発表を行った. タッピングゲームでは,ゲームの難度は使用する音楽コンテンツに依存するが,音楽コンテンツのリズムに関しての難度を明らかにするための実験を聴覚障害者を対象として行い,リズムの複雑さと音の重畳が特に難度に関係することが分かった.今後,ゲームにおいて音楽コンテンツを選択する場合の参考になる結果となった. 研究代表者は,実験計画をたて,研究分担者の寺澤はミュージックパズルの長期使用実験のデザインとタッピングゲームの実験分析,同松原はコンテンツ作成とタッピングゲームの実験分析を担当した.同田渕は,特に人工内耳装用者が実験に参加する場合に予想される状況を分析した. また,H29年度には,環境音認知,タッピングゲーム,ミュージックパズルの短期使用実験に関する英語論文をまとめたので,H29年度中に投稿する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのタッピングゲームの長期実験結果から,ユーザがゲームを継続して自発的に取り組むための要因の一つとして難度が重要であることが明らかになったため,H28年度はタッピングゲームで用いる音楽コンテンツのリズムに関しての実験を行った.リズムの複雑さ,音の重畳,テンポ,アクセントについてそれぞれ複数種類のコンテンツを準備,それらを組み合わせ,テンポ追従の実験を行った.これにより,リズムの複雑さとアクセントの有無がテンポ追従に影響を持つことが明らかになった.実際の音楽では複雑なリズムを聴き,いくつもの楽器で演奏されているため,聴覚障害者にとっては日常の音楽からテンポを聴き取ることが難しいという理由の一部を検証できた.しかしながら,音の重畳の影響の差が見られなかったことについては,実験で使用したコンテンツと実際にゲームで使用するコンテンツについて音響分析をして考察する必要がある. また,音楽を集中して聴くことを求められるゲーム(ミュージックパズル)の集中使用による聴く力の変化を調査する実験計画をたてた.集中使用期間中に用いる音楽コンテンツの選択,準備,集中使用の前後で行う聴く力を調べるテストについても計画した. 環境音認知はこれまでの対象を広げ,高齢者の認知について取り組むことにし,予備実験を行った. 研究代表者と研究分担者の寺澤・松原は毎月対面ミーティングを行い,進捗を確認してきた.研究分担者の田渕とは,聴覚に関するミーティングを随時行った. また,タッピングゲーム,環境音認知,ならびにミュージックパズルについて英文論文誌に投稿するための準備を行った.いずれも研究代表者と研究分担者3名,スウェーデンの連携研究者が論文準備に携わった.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎えるにあたり,集中的に音楽ゲームを一定期間使用したときに,聴く力に変化があるかどうかを調べる実験を聴覚障害者を対象として行う.実験前後でのテストを行うことで,我々が提案する音楽ゲームが聴く力のどのような部分に対して有効となるかを調べる.聴く力を活用しようとする聴覚障害者は,聴くトレーニングにより聴く力を伸ばすことができるということについて,この実験で明らかにできれば,我々が本研究を開始するときにたてた仮説が検証されるが,万が一実験前後のテストでそれが顕著にならない場合でもログの分析によりゲームの遊び方の変化を見ることができると考えている.H29年度前半で音楽ゲームの集中使用実験を行い,スウェーデンの連携研究者を訪問して結果の分析を共同で行い,それを基に今後の音楽ゲームの発展について議論を行う予定である.また,この実験に関して英文論文にまとめる.我々の研究は聴覚障害者が日常音楽に取り組む姿勢に沿った実験を行っており,負担のない方法で聴く力をつけることができれば聴く力のトレーニングについて新たな方法を提案できることになる. H28年度に聴覚障害者に対して行ったリズム認知の要因の実験を健聴者に対しても行い,リズム認知に関し,聴覚障害者と健聴者の間に難しさに関して違い,または同じ傾向があるのかどうかについて検証する.結果は国際会議で発表したい. 環境音認知については,聴覚障害児に対する環境音認知教育のためのゲームを設計する予定であり,国内の研究会での発表を計画している. また,H28年度にほぼ投稿寸前まで準備できた英文論文3本を推敲のうえ投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度中に連携研究者であるスウェーデンの研究者2名が来日,2週間程度滞在して最終年度に向けての実験計画・論文作成計画を含む研究ディスカッションを行う予定であった.しかし,2名ともライフステージに関連するそれぞれの家庭の事情により来日ができなくなったため,46万円程度次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額として生じた金額については,平成29年度が本研究の最終年度であることに鑑み,これまでの研究をまとめ,オープンアクセスジャーナルに発表するためのディスカッションを行うため研究代表者がスウェーデンを訪問することと,実際に投稿・発表を行うことのために使用する.訪瑞は,今後,本研究をどのように発展していくかについてもディスカッションを行い有意義なものとなる予定である.
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