研究実績の概要 |
今年度は研究計画書に基づき研究1「社会・経済的要因の検討」,研究3「文化的要因の検討」および研究4「情報活用を促進する情報デザインの開発」を実施した.研究1「社会・経済的要因の検討」では学生・主婦を対象に眼球運動計測実験および質問紙調査を行い,添付文書閲読状況を詳細に検討した(河瀬ほか,印刷中;小山ほか,投稿準備中).調査の結果,添付文書に必ず目を通すと答えた消費者が全体の90%以上を占めたものの,消費者が必ず目を通す記載項目は比較的少数に限られていた.また,医薬品・食品のコマーシャル映像を用いた実験では,「説明が詳しい」などの情報的側面よりも「かわいい」「おもしろい」などの情動的側面が購買意欲に影響を与えやすいことが示唆された(Zhang et al., 印刷中).以上の実験・調査結果は医薬品・食品購入時に情報探索行動があまり活発に行われていない可能性を示唆している.研究3「文化的要因の検討」ではシンガポール・アメリカ合衆国・日本の3カ国の医薬品外箱・添付文書のデザインを比較した(高橋ほか,2015,医薬品情報学会).シンガポールの外箱および添付文書における記載情報の書かれた面積の割合は日本と比べて少なく,デザインが日本と比べてシンプルな傾向が認められた.一方,アメリカ合衆国の医薬品には添付文書が内包されておらず,外箱では「使用上の注意」など使用に関する情報が大きな面積を占めていた.また,日本人・アメリカ人を対象に食品購入時の眼球運動を比較する実験も行った.研究4「情報活用を促進する情報デザインの開発」ではピクトグラムを使用した添付文書の開発や,副作用情報を強調したインターネット医薬品販売サイトを試作し,検証実験を行った(倉田ほか,投稿中; 向井ほか,2015年11月ブリスベン,オーストラリア).
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