今年度は研究計画書に基づき研究1~4の全てを実施した.研究1「社会・経済的要因の検討」では学生・主婦を対象に視線計測実験を行い,一定の条件下では「機能性表示食品」という表示が栄養成分等の詳細な記載項目への注視を抑制する効果を持つことを確認した(坂井ほか2017).今後はこのような抑制効果が生じるメカニズム,消費者の積極的な情報探索を促進するためのデザインの改善についてさらに詳しく検討する予定である.研究2「発達・教育的要因」では生産者情報の「見える化」が食品の安全性・品質評価に与える影響を専門家と一般消費者で比較した(青山ほか2016).一般消費者は生産者の顔写真に基づいて食品の安全性・品質を評価する傾向が強く,専門家は食品そのものの外見に基づいて評価する傾向が強いことが示唆された.研究3「文化的要因の検討」では日本人消費者とアメリカ人消費者のOTC医薬品選択時の視線を比較した(河瀬ほか2017)。日本人被験者は「製品名」,「キャッチコピー」を長時間注視し,アメリカ人被験者は「成分」を長時間注視しており,日本人・アメリカ人被験者間で注視方法の違いがみられた。また,日本人・アメリカ人を対象におみやげ用食品購入時の視線を比較する実験も行った(高山ほか2017).研究4「情報活用を促進する情報デザインの開発」ではピクトグラムを使用した添付文書の開発を行った(倉田ほか,2016; 小山ほか2016).ピクトグラムの試作と修正を繰り返した結果,ピクトグラムの理解度の向上が確認されたことから,今後の研究では開発したピクトグラムを挿入した添付文書を試作し,ユーザビリティ評価を行う予定である.さらに,タブレット端末を利用した医薬品情報媒体およびコンテンツの開発も行った.この研究の成果については第64回 春季研究発表大会(2017年7月拓殖大学)にて報告する予定である(石原ほか2017).
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