研究実績の概要 |
衣服の美観や機能を保つために, 着用中に汚れが付着しにくい防汚素材が開発されている。主な手法はフッ素系加工剤による布表面の撥水化であるが, 環境負荷, 廃液の発生, 繊維の強度低下などの問題が指摘されている。また, 撥水化処理では, 付着した汚れが水洗濯で落ちにくいという欠点がある。本研究では大気圧プラズマジェットを利用し, ヘキサメチルジシロキサンを併用したプラズマ重合を布の防汚加工に利用することを試みた。 ポリエステルおよびレーヨン(再生セルロース)の各平織布, 並びに幾何学的に単純なPETフィルムを用い, 市販装置を用いてプラズマ重合を行った。比較のため, 二種のフッ素系加工剤を用いた湿式処理も行った。静滴法で接触角を測定したところ, プラズマ重合試料は加工剤処理に比べて撥水性およびヘキサデカンに対する撥油性に優れていることが確認された。粒子汚れのモデルとしてカーボンブラック, 赤土および擬似花粉を用い, JIS L 1919に準拠して付着試験を行った。布では表面反射率法, フィルムでは画像処理法により付着性を評価したところ, プラズマ重合試料は加工剤処理に比べて著しく防汚性に優れることがわかった。また, プラズマ重合試料は加工剤処理のように, 水洗濯性を大きく損なわないことがわかった。 プラズマ重合試料の優れた防汚性能には, 繊維表面に形成された粒状の突起や表面粘着性が関与している可能性が示唆された。実用的観点から, プラズマ重合試料の堅牢度試験を行ったところ, 洗濯耐久性に優れるが, 摩擦耐久性にやや劣り, 今後の課題が示された。
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