植物種子は広く食品として利用されているが、種子に含まれるタンパク質はアレルギーの原因物質となることが多い。患者によっては死に至るような重篤なアレルギー症状を示すため、食品の安全性の面からその要因の解明が急務とされている。小麦はパンや麺などとして日常の食生活の重要な素材であるが、主要なアレルゲンの原因物質ともなっている。特に、小麦は3大アレルゲンの一つであり、重要なアレルギー食品となっている。本研究では、小麦の種子タンパク質に対する組換えタンパク質を作成し、アレルギー症状を引き起こす小麦タンパク質を明確にするとともに、その構造を同定することを目的とする。 リコンビナントタンパク質を用いた小麦アレルゲンの比較解析から、小麦タンパク質の中で主要なアレルゲンを同定した。特に、α-グリアジンの分子種に対して反応性を示す患者が多いことが明らかとなった。α-グリアジンはN末端の繰り返し配列を持つドメインと、システィン残基を多く含むドメインにより構成されている。α-グリアジンのエピトープの同定のためにペプチドアレイを作製し、患者血清との解析により反応性の高い領域を同定した。強く反応を示すペプチド配列が複数認められ、患者間においても共通して強い反応性を示した。これらの配列の共通性から、アレルゲン性を示す重要な構造が示唆された。また、加工のために処理した小麦タンパク質の反応性についても解析し、処理を行うことによってアレルゲン性が変化することが示唆された。
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