研究課題/領域番号 |
26282020
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
神山 かおる 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品機能研究領域, 上席研究員 (00353938)
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研究分担者 |
早川 文代 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品機能研究領域, 主任研究員 (00282905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食品 / テクスチャー / フレーバー / 咀嚼 / 嚥下 |
研究実績の概要 |
食品のテクスチャーを決定する因子として、力学特性が大きな部分を占めている。そこで、食品試料として、力学特性を制御しやすいハイドロコロイドゲルを用いることとした。ヒトの咀嚼・嚥下挙動に最も影響が大きい力学特性である、大変形時の圧縮荷重値を基本指標値として利用した。試料ゲル調製時には、テクスチャーアナライザーにより圧縮試験を行い、破壊荷重が同等のもの、破壊歪みが同等なものを調製した。 呈味物質としては、甘味という好ましい嗜好性をもち水溶性であるが、固形状食品中では必ずしも液体として存在していないショ糖を用いて検討した。テクスチャーとフレーバーの相互作用を考慮して、寒天ゲルにショ糖を加えたモデル試料を調製した。ゲル試料中の寒天濃度、ショ糖濃度は、実食品の範囲としたが、例えば羊羹のように50%以上の高ショ糖濃度の食品も存在する。弱い甘味を感じる10%程度であっても、ショ糖添加による試料ゲルの力学特性は変化した。少量の添加で甘味を付与する甘味料は、甘味の濃度依存性がショ糖とは異なったために、実際の食品への応用を考えると不適当であると考えられた。 次に、ヒトの摂食過程の計測条件を検討した。閉口筋である左右咬筋と開口及び舌運動を反映する舌骨上筋群の筋電位を、スライド式の感覚強度を答えるスイッチからの出力に加えて、同時に記録するシステムを構築した。食品ゲル試料の数、量、試料提示法を予備的に検討し、官能評価パネルの訓練のため、ショ糖水溶液とショ糖を含む寒天ゲルという基本的な試料を用いた甘味強度の時間変化を測定した。これらのシステムについて、所属する研究機関の倫理委員会に実験計画を提出し、承認を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画のうち、多糖類を用いたハイドロゲルにより、破壊荷重や破壊歪みを制御した食品モデルが調製でき、筋電位測定を行った。感覚強度の時間変化を調べるTI法による官能評価の予備的な検討ができた。呈味物質をゲルに含めると、ゲルの物性が変ってしまい、設計通りの物性に制御できない点が解決できていない問題である。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の計画通りである。 1)ヒト試験の実施:平成26年度に検討した筋電位測定条件に基づいて、測定で使用する食品試料の種類や量を決定する。訓練されたパネルにより、試料を自由に咀嚼・嚥下している際のヒトの試験を行い、定量的なデータを取得する。 2)ヒトの摂食速度条件での力学機器測定:一般的なテクスチャーの機器分析法である、動的粘弾性測定、一軸圧縮試験機による破壊測定及び2バイトテクスチャープロファイル(TPA)測定等を行う。平成26年度に購入した下顎運動測定装置等も活用して、ヒトの摂食に近い速度の周期的な運動を機器で再現する。また、ヒトの咀嚼中に食品にかかる力を平成26年度に購入した高速多点圧力計測システム等で測定し、機器測定値と比較検討を行う。 3)米飯による摂食試験:米品種や精米条件を変えて調製した米飯により、筋電位測定を行い、摂食速度その他のパラメータを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果を投稿する論文の英文校正代を予定していたが、原稿執筆が間に合わなかった。また、研究補助者の賃金を予定していたが、年度末に当該者が休暇を取得した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度ただちに論文2件分の英文校正を依頼し、次年度の研究補助者の賃金に充当する。
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