研究課題/領域番号 |
26282026
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
田口 明子 宮崎大学, 医学部, 准教授 (80517186)
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研究分担者 |
上野 浩晶 宮崎大学, 医学部, 助教 (00381062)
望月 仁志 宮崎大学, 医学部, 講師 (50501699)
塩見 一剛 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40305082)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 認知機能障害 / 老化 / 神経細胞新生 |
研究実績の概要 |
糖尿病が海馬神経細胞新生および認知機能へ与える影響:海馬歯状回の神経細胞新生は加齢と共に低下し、認知機能の衰退と連動することが知られているが、我々は高脂肪食摂取糖尿病(DIO)マウス海馬歯状回の神経細胞新生も加齢と同様に低下すると共に本マウスは認知機能障害を呈することを明らかにした。これらの結果から、認知機能は中枢神経系だけで制御される訳では無く、血中因子を介した認知機能調節機構の存在が示唆される。この可能性を確かめるために、DIOマウスと野生型マウス間の交差輸血後、海馬神経細胞新生および認知機能について解析を行った。その結果、体重や血糖値の動向とは関係無く、DIOマウスの血中に野生型マウスの認知機能と神経細胞新生を低下させる分泌因子が存在することを突き止めた。 糖尿病に伴う認知機能障害を誘導する既存血中因子の探索:DIOマウスと野生型マウスの血清/血漿を用いたマルチプレックスサスペンションアレイおよびELISA法による解析から、DIOマウス血清/血漿で有意に増加する因子を得た。本因子は認知障害を予期するバイオマーカーの候補因子となる可能性があることから、最近、理化学研究所で開発された次世代型アルツハイマーモデルマウス血中における候補因子の動向について解析を行った。次世代型 ADモデルマウスは半年以降で認知機能障害を呈するが(Saito T et al. Nat Neurosci.2014)、認知機能障害が現れる以前の若齢期における本マウスの血清/血漿を用いた解析から、次世代型 ADモデルマウス血中における候補因子の濃度は対照マウス血中に比べすでに高い傾向にあることが判った。現在のところ、観察個体数が不十分なため統計学的な有意差を算出できていないが、今後は、解析数を増やすと共に、経時的な血中の候補因子の量的変化について精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術が発展した現在であっても、依然として網羅的な血中因子の探索は技術的に困難であることから、既存血中因子の探索にフォーカスして解析を行った。しかしながら、マルチプレックスサスペンションアレイおよびELISA法を用いた既存血中因子のスクリーニングであっても量的や感度、時間の問題があり、また非常にコストもかかることから、スクリーニングに係る費用によって本年度予算の殆どが消えてしまい、結果にも結びつかない困難な状況に陥ったが、後半、どうにか候補因子を得ることができたため、今後の解析へと進展できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度に得た研究成果を基盤とし、また研究計画に従って以下実験を行う。 1-1) マウス腹腔内への候補因子の投与による解析:候補因子単独と候補因子と抗候補因子抗体を共に野生型マウス腹腔内に投与し、最初に海馬依存的学習記憶機能(Water T maze テストによる)を行い、有意な差が見られた場合は、海馬における神経細胞新生と幼弱神経細胞での樹状突起のパターン形成、IRS2とPTENの発現への影響、そして、細胞死や神経炎症の状況についても調べる。1-2) マウス脳海馬への抗体投与による解析:候補因子の腹腔内への投与と共に、抗候補因子抗体とアイソタイプ抗体を直接野生型マウス脳海馬へ投与し、上記同様の解析を行い、候補因子の効果を査定する。1-3)パラバイオーシスを用いた解析:腹腔内への候補因子の投与を用いた解析と平行して、パラバイオーシス法を用いて、異種個体間からの循環血中因子が学習記憶機能に与える影響について確認、解析する。候補因子が既知であることから、候補因子の変異マウス(過剰発現マウスあるいは欠損マウス)が存在し、入手可能な状況にあることも考えられる。入手可能な場合は、野生型マウスあるいはDIOマウスと候補因子の変異マウスとのパラバイオーシスを作成し、その後、それぞれ個々のマウスの学習記憶機能や神経細胞新生など同様の解析を行い、候補因子による影響を投与実験結果と照合し評価する。同様に、1-4)次世代型アルツハイマーモデルマウスと候補因子の変異マウスとのパラバイオーシスを作成し同様の解析を行う。
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