研究課題/領域番号 |
26282028
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (30334717)
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研究分担者 |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (10209702)
牟田 真理子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (40445193)
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (40453518)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胎盤関門 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
昨年度の研究で解析したトランスポータータンパクのうち、ヒト胎盤刷子縁膜における発現量が最も高かったのはグルコース供給を担うSLC2A1であった。SLC2A1を介した3-O-methyl-D-glucoseの胎盤透過性を評価した結果、胎盤透過性の指標であるFUI値が66%となり、細胞間隙マーカーでもあるsucroseの約10%と比較して著しく高いことが示され、SLC2A1の高発現が機能的に裏付けられた。 2番目に発現量が高かったSLC29A1は、ヌクレオシドを幅広く基質とする。SLC29A1およびSLC29A2を介した胎盤刷子縁膜におけるヌクレオシド輸送活性の再構築を目指し、研究を展開した。まず、SLC29A1およびSLC29A2を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞による生体内ヌクレオシドおよび異物基質の取り込みクリアランスを算出し、同時に卵母細胞の細胞膜画分におけるSLC29A1およびSLC29A2タンパク発現量を算出することで、各基質の単分子輸送活性を算出した。算出した単分子輸送活性と、ラット胎盤刷子縁膜画分におけるSLC29A1およびSLC29A2タンパク発現量(昨年度算出済み)の積から、ラット胎盤刷子縁膜におけるSLC29A1およびSLC29A2を介したヌクレオシド類の輸送活性を再構築した。その結果、ラット胎盤刷子縁膜のSLC29A1およびSLC29A2を介したuridine、thymidine、didanosine、およびribavirinの輸送活性は、各々31、29、2.5、および120 μL/min/mg proteinと算出することができた。再構築された輸送活性と、昨年度算出した胎盤透過性の指標であるFUI値との間の相関性は低かったため、基底細胞膜における透過性および胎盤関門細胞内における代謝の影響等も、胎盤透過に大きく影響していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の解析において胎盤刷子縁膜において高い発現量が示されたトランスポーターについて、そのトランスポーターを介した輸送活性を定量的に再構築することができたため、研究は着実に進んでいる。ただし、再構築された輸送活性と実際の胎盤透過性の間の相関は必ずしもとれておらず、将来的には他の規定因子についても解析を進めるべきである。
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今後の研究の推進方策 |
栄養物質を対象とした胎盤透過性解析と、胎盤において発現量の高いトランスポーターを介した輸送活性の再構築を引き続き進める。さらに胎盤トランスポーターの発現量を規定するmiRNAを同定し、当該miRNAを介した胎盤トランスポーターの発現制御メカニズムを明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は効率的に研究を進め、具体的には安定同位体標識ペプチドや細胞培養用試薬の購入費用を抑えることができた。また、旅費も予定より抑えられたため、計画よりも少額の支出となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の使用予定額は増額となるが、主に試薬など消耗品購入費用に充てることとする。今年度はmiRNAの発現解析や、質量分析に多くの予算を割く予定である。必要な実験設備は学内および研究室内の現有施設を使用するため、高額な設備備品購入は必要としない。その他、研究成果発表のための学会参加費、および研究成果を英語論文で発表するための論文校閲費や投稿費としても使用予定である。
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