研究課題/領域番号 |
26282033
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 泰之 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (70273208)
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研究分担者 |
亀田 真澄 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (10194995)
吉冨 賢太郎 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10305609)
谷口 哲也 日本大学, 医学部, 准教授 (10383556)
深澤 謙次 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 准教授 (50238440)
安武 公一 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (80263664)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | eラーニング / ラーニング・アナリティクス / 数学教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,主に数学オンラインテストの学習データ,すなわち,学生が選択した問題において,その問題の解答履歴(誤答箇所の種類と,解き直しによる正答への到達の履歴)に着目した,いわば解答過程追跡型の学習データの蓄積・解析を行うことにより,主に数学的知識の獲得過程に関する数理モデルを構築することである。具体的な目標は以下のとおりである。(1)データ蓄積の効率化を目指したモバイル対応型受験システムの開発。(2)数学オンラインテストの解答過程を追跡することによる,詳細な学習データ解析手法の確立。(3)詳細な学習データ解析を基盤として,数学的知識の理解度の時間変化を記述する数理的なモデル構築。
この目的を達成するために,初年度から開始した学習データの蓄積を継続し,解答過程のモデル化に向けてプロトタイプの構築を行うことを当該年度の計画としていた。これを鑑みた具体的な成果は以下のとおりである。 1. 学習データの蓄積について。前年度に引き続き,学習データの蓄積を継続して行った。解答過程の追跡のために,単純な正答・誤答の評価だけでなく,部分的正解などの評価を含む問題として,g買う性からの様々な想定解答に対応した採点が可能なポテンシャル・レスポンス・ツリーの機構を備えたSTACKの問題・解答の蓄積を行った。 2. 解答過程の数理モデルのプロトタイプ構築について。これまで,ネットワーク科学の知見を元にした数理モデル化を検討してきたが,解答過程を追跡していくうえで,解答の遷移に着目した確率過程を基盤としたモデル化の可能性を模索した。 3. モバイルデバイス対応数式入力インターフェースについて。これまで,スマートフォン用の数式入力インターフェースとして,フリック入力を応用したインターフェースを開発してきたが,フルキーボードとフリック入力を融合したインターフェースの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モバイル環境まで視野に入れた,オンラインテスト環境構築のために,モバイル対応数式入力インターフェースの開発を進めてきた。前年度までに,我々が既に実装しているSTACK用数式入力インターフェースMathDoxを活用して,テンキータイプのフリック入力を応用したインターフェースの開発を行っていた。28年度はそれを拡張し,フルキーボードに対応したフリック入力対応キーボードを開発し,STACKでの利用が可能になった。数学のオンラインテストを,PCだけでなくスマートフォンから受験する学生も少なくなく,効果的な環境構築が行われたとかんがえられる。
一方,本研究課題の柱の一つである,数学オンラインテストの学習データ,すなわち,学生が選択した問題において,その問題の解答履歴(誤答箇所の種類と,解き直しによる正答への到達の履歴)に着目した,いわば解答過程追跡型の学習データの蓄積・解析を行うことにより,主に数学的知識の獲得過程に関する数理モデルを構築することについて,当初ネットワーク科学を基盤としたモデル化を模索し,プロトタイプの構築を目指していたが,そのモデル化がやや遅れていると言わざるを得ない。しかし,ベイジアン・ナレッジ・トレーシングなど,解答遷移に着目した確率過程を応用したモデル化を遂行していくことが可能であるとの見通しがあり,遅れは挽回できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
主に,数学オンラインテストの学習データ,すなわち,学生が選択した問題,その問題の解答履歴,つまりどのような誤答,準正答を経て正答に至るかというサイクルを追跡した,いわば解答過程追跡型の学習データを蓄積・解析することにより,数学的知識の獲得過程に関する数理モデルを構築するという研究目的達成のために,最終年度である平成29年度では,初年度から蓄積を開始した学習データをさらに継続していくと同時に,正答に至るまでの解答過程のモデル化を完成させる計画である。
学習データの蓄積継続については,これまで同様,日本大学,大阪府立大学,呉高専,山口東京理科大学を中心にデータの蓄積を行う予定である。
解答過程の数理モデル化に向けては,解答過程が学生の選択するSTACKのポテンシャル・レスポンス・ツリーの末端要素の時間的推移であることに着目し,要素間の結びつきの強さ,要素間推移の方向などの属性をもつ有効ネットワークとみなした解析を想定している。特に,要素間推移のモデル化として,ベイジアン・ナレッジ・トレーシングなど,確率過程を基盤としてモデル化してく計画である。
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