研究実績の概要 |
本研究においては,学習者個人の能力ではなく,学習者間の相互作用において生じうる集団的知性に着目し,個人による成果物ではなく,集団としての成果物の質を向上させることを狙った.集団的知性を制御するために,行動を規定する簡単なルールを2種類導入した.具体的な問題解決のテーマは,論理的文書の作成とした.文章執筆の技能向上に関する取り組み事例の1つである小学生の読書感想文の練習に穴埋め式ワークシート(新学社の教材)を活用する取り組みに着目し,「型」と集団的知性を実現するためのルールとの間に類似性を見出した.この「型」を集団的知性に働きかけるツールと位置づけ,新学社のホームページ上に穴埋め式ワークシートの新規活用法を提案した.主に大学初年次生による文章作成プロセスにおける集団的知性の実現を図り,その結果,文書の質の向上を認めた.具体的には,提出された全てのレポートにおける特徴的キーワードの出現頻度を分析した結果,ほとんどのレポートにおいてルールへの適合度の向上,および他のレポートとの間での差異の縮小(均質化),すなわち「最良の1つの成果物」への収束が認められた.一方,レポートに付加・置換されたキーワードの由来を分析した結果,筆者らが集団的知性の働きとして期待した「他者のキーワードの再利用」は1例が認められた.このことから,付加・置換を行わせるルールの適用が容易ではなかったと考えられた.左記実験結果・成果は,第64回工学教育研究講演会,及び第23回大学教育研究フォーラムにおいて計3件発表した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に予定している研究分担者(村田)も関わる検証実験を実施するにあたって,研究代表者及び研究分担者(矢部)が既に実施している実験を,研究分担者(村田)が視察し研究代表者・研究分担者(矢部)と打ち合わせる.また,研究代表者らによる学会発表・論文投稿,研究分担者(三浦)による国際学会発表等の成果発信を行う.
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