研究実績の概要 |
本研究は,理科授業での教師と子どもの発話において「個別」と「普遍」の使い分けを自覚的におこなうための指導法を開発することが主な目的であった。 まず,理科授業において「個別」と「普遍」の区別が明確に区別されているかどうかの実態調査をおこなった。理科授業において「個別」と「普遍」を教師が自覚的に区別しなければならない局面は,実験や観察をおこなった後の「結果」から「結論」を導く場面において顕在化する。しかし,「個別」と「普遍」の使い分けを厳密に区別した上で授業に臨んでいる理科教師は少ないことが明らかとなった。特に小学校理科授業においてその傾向が高かった。次に、前述の実証的調査の結果をもとに,「個別」と「普遍」の混乱解消のための具体的手法を検討した。具体的には,第4学年「電池の働き」,第5学年「メダカの成長」,第6学年「ものの燃え方」の単元における実践をもとに,その妥当性を検討した。その結果,実験や観察を通した具体的な結果や現象をできるだけ多く見いださせ,「個別」の事実として児童・生徒に明確に把握させること,その事実の共通点を抽出し差異点を捨象するという思考を児童・生徒自身に行わせること,これらの過程において「個別」と「普遍」を区別することを児童・生徒が意識的におこなうようになること,などが明らかとなった。これらの知見に基づき,「個別」と「普遍」の混乱を解消するカリキュラム作成をおこなった。特に実践研究を実施した単元を中心に,関連する学習内容について,各学年の系統をふまえたカリキュラムを作成した。 本研究の目的であった「個別」と「普遍」の区別の明確化は,言い換えれば「科学的思考」の育成そのものである。このことから、本研究において見いだされた授業手法やカリキュラムは,理科で目標とされている「科学的な見方や考え方を養う」ことにも,大きく寄与するものとなった。
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