最終年度では、研究目的を考慮して研究総括に向けた分析、モデル化した。 (1)学習環境による学習効果の比較分析によるモデル化:ほぼ同一の学習内容について、対面授業を伴うブレンディッド学習とICTによる教材だけを用いたフルオンライン学習の学習活動と学習効果の関係をモデル化し、違いを明らかにした。学習者特性や学習者のスキルが、ノート記録活動を媒介として、学習成果に及ぼす因果関係を明らかにした.特に2つの学習環境の間では、学習者自身の活動であるノート記録に大きな違いが見られた. (2)言語情報に着目したスキル獲得の評価手法の開発:学習環境における言語情報の活用を調べるために、フルオンライン学習において、視覚情報、音声情報としての言語情報が、学習者にどのように活用されるかを、ノート記録される言語情報との関係を基に検討した。その結果、音声情報の記録に関する指標が学習成果と関連することが示された。さらに、音声情報に関するノート記録活動や学習者の態度に関する変数の寄与を確認した。 (3)情動変化の評価法開発:学習者の感情や意欲を生体指標を用いて簡便に評価するために、非接触型の眼球運動計測装置を用いて、感情状態を評価する手法を開発した。感情喚起画像データベースを用いて、観察者自身による画像に対する感情評価を得た上で、眼球運動の眼振成分のパワーを評価し、快-不快間で比較可能であることを確認した。 (4)体系化された指導法に基づく自律的学修の教授設計手法の確立:学習メディア、学習形態、学習活動の設定によって、自律的学修への寄与を調べるため、学習者の内省指標との関係を検討した。その結果、具体的な学習活動であるノート記録スキルを育成する指導を行うことで、内省活動や主体的な学習活動にも波及効果が見られた。これらの結果から、学習者自身の学習活動を促進する具体的な指導が自律的学修に寄与することを示した。
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