平成29年度は本課題の最終年度のため、電子教科書が持ちうる機能を整理した。特に、学習者各自が持つタブレットPCなどのデバイスを用いて学習行動履歴を取得・分析し、学習者にフィードバックを行う「学習履歴分析(Learning Analytics: LA) についての研究を推進した。従来から、LMSなどサーバ側で取得できる情報を用いたLAは、多くの先行研究がある。これに対し、学習者が持つデバイスを用いて活動情報を収集するLAは Multimodal LAもしくは Behavioral LAと呼ばれ、まだ研究途上の段階である。国際会議LAKにおいても、ここ数年セッションが成立する程度の研究発表しかなされていない。 本課題では、脈拍や視線移動などを取得する専用かつ高価なデバイスを用いるのではなく、タブレットPCなど、教育現場で今後導入されるであろうデバイスを用いた Multimodal LAに着目して研究を進めた。この結果、以下の研究を進めることができた。(1) 教科書のページめくり情報の分析による学習者特性の推定、(2) アクティブラーニングでの学生相互評価における採点タイミング分析による学習活動の形成的評価、(3) 調べ学習における検索ワードや参照ページやタイミングの分析による学習活動の隘路分析、(4) 学生相互プレゼンテーションやグループディスカッションにおける発言分析による貢献度の推定。 これらにより、教員の状況把握が難しいとされるアクティブ・ラーニングにおける Multimodal LA の適用可能性を示すことができた。今後アクティブ・ラーニングが教育現場に展開される際に、その活動設計や教員の状況把握を支援する意味で、有効性のある研究であると考える。
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