• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実績報告書

出土青銅製文化財の保存処理に使用されたアクリル樹脂の劣化について

研究課題

研究課題/領域番号 26282072
研究機関公益財団法人元興寺文化財研究所

研究代表者

植田 直見  公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)

研究分担者 川本 耕三  公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10241267)
塚本 敏夫  公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
難波 洋三  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (70189223)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード出土青銅製品 / アクリル樹脂 / 劣化 / 赤外分光分析 / 熱分解‐ガスクロマト/質量分析 / ゲル透過クロマトグラフィ / 保管・展示環境
研究実績の概要

今年度は荒神谷遺跡出土銅剣について、その一部分から以前の緊急修理で含浸されたアクリル樹脂(パラロイドNAD10)を溶剤(アセトン)で抽出し分析を行った。分析は全反射フーリエ変換赤外分光(ATR-FTIR)、熱分解‐ガスクロマト/質量分析(Pyro-GC/MS)、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)の3種類の方法を用いた。ATR-FTIRは36点、、Pyro-GC/MSは25点について、さらにGPCは新しく装置を導入するための予備的な分析として実施した。遺物から抽出した樹脂と未使用の樹脂とを比較することで、分析結果に変化が生じているかどうかの有無と、変化している場合はどのような変化が生じているかの確認を行った。
以前にも銅鐸や銅剣の一部をATR-FTIRで分析し変化が確認されたが、今回以前の試料とは別の資料について分析を行った結果、ATR-FTIRについては前回と同様にその一部に未使用の樹脂と比較すると主なピーク位置のシフトあるいはピーク強度が変化することが認められた。変化が認められたものの中から25点を選びPyro-GC/MSを実施した。結果は現在検討中である。
また、GPCについてはまず新たに科研費で分析装置を購入し測定を行うための装置の導入に向け機種を選択する作業にとりかかった。まず、未使用の樹脂と遺物に含浸された樹脂などの分析をメーカーに依頼し、結果を確認するとともに装置の費用や性能も含め総合的に判断して購入メーカーを決定した。年度末には装置が設置され、予備的な分析を始めた。来年度から本格的な分析を開始する。
これらの分析と平行して遺物の履歴からどのような保管環境および展示環境に置かれていたか、さらに劣化への影響なども調査した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた分析は予算の関係で熱分解‐ガスクロマト/質量分析(外注分析)の点数を減らさざるを得ず、また分子量分布を調べるGPCシステムも同様に選定に時間がかかった。しかし、計画を変更し点数を少なくすることと、GPCでは分析条件まで検討することが出来たため、大きな遅れとはならないと考える。

今後の研究の推進方策

昨年に引き続き、出土青銅製遺物に含浸された樹脂の分析を進め変化の有無とどのような変化が生じているかを確認する。それと平行して化学変化が機能の低下する劣化であるかどうかを確認するため、遺物と同等の青銅製の試験体および樹脂そのものを用いて紫外線、熱、水分などの要因による劣化促進実験および機能性試験を実施する。
具体的には青銅製品と同様な銅、鉛、スズの比率の合金(昨年度にすでに作製している)を用いて、まず遺物と同様に表面を錆びさせた後、樹脂を含浸し様々な劣化要因でその樹脂を劣化させ同様な分析を実施する。
これらの分析結果を比較し樹脂の化学的な変化を分子構造から検討するとともに機能的な変化から劣化として判断してよいかを検討する。
これらの分析と昨年度に引き続き履歴調査を実施しそれらの結果を総合的に判断し、変化が劣化として捉えられるかを判断する。これらからだけで判断ができない可能性も考えられるため、必要であれば他の分析方法も検討する。

次年度使用額が生じた理由

当初の申請額よりかなり減額されたため、分析装置や外注分析である熱分解‐ガスクロマト/質量分析にかかる費用を抑えるため、装置の選択や外注分析の点数の削減を検討した。
そのため、装置の選択・決定に手間取り、予定より導入がずれたこと、さらに外注分析の点数を減らしたため、最終的には9,683円がこれを当初の予定で使用する項目がなくなり残ってしまった。

次年度使用額の使用計画

27年度も全体としては当初より減額となっているため、外注分析費などに当てたい。

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi