研究課題/領域番号 |
26282072
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研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
植田 直見 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
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研究分担者 |
川本 耕三 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10241267)
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
難波 洋三 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (70189223)
山口 繁生 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00752370)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 出土青銅製品 / アクリル樹脂 / 劣化 / 赤外分光分析 / 熱分解‐ガスクロマト/質量分析 / ゲル透過クロマトグラフィ |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き、新たに36点の銅剣について、アセトンで抽出した樹脂をATR-FTIR(赤外分光分析)とPyro-GC/MS(熱分解‐ガスクロマト/質量分析)により分析を実施した。ATR-FTIRではその一部に昨年と同様に1230㎝-1付近の吸収位置と強度および1150㎝-1付近の吸収強度に変化が見られたものがあった。これまで対象とした全試料についてのATR-FTIR分析の結果では、その約25%に強度の変化と約30%に高波数側へのシフトが見られた。また、ほぼ半数に1150㎝-1付近の吸収強度の減少が見られた。Pyro-GC/MSでは未使用の樹脂も含めて主なピークはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルであることが分かった。特に550℃における熱分解では未使用の樹脂に比べて含浸樹脂のピークの増加が確認されたことから何らかの化学変化が生じている可能性があることを示すと思われた。 さらに未使用のアクリル樹脂を標準試料として60℃、105℃、60℃(95%RH以上)の環境に保管し劣化促進実験を実施した。これらについてはATR-FTIRとPyro-GC/MS以外にGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)による分析を実施した。その結果、60℃に加温した樹脂は、塗膜硬化や分子量の変化が観察されたが、骨格構造に大きな変化は観察されなかった。105℃に加温した樹脂は、塗膜硬化とともに、構造的な変化が観察された。高湿度下で60℃に加温した樹脂は、分子量に変化は観察されないが構造的な変化が観察された。それらの変化は、銅剣から抽出した樹脂の変化と異なることも明らかになった。今後、構造変化を促進すると考えられる鉄や銅イオンの存在下で60℃の加温を行うことでアクリル樹脂がどのように変化するかを検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
含浸に使用しているアクリル樹脂はパラロイドNAD10であるが、この樹脂は溶液状態で市販されており、溶剤を蒸発させてシート状にした樹脂の劣化促進実験を行う計画であった。しかし、溶剤を完全に蒸発させるとシートが非常にもろくなることがわかった。そのため、当初計画していた方法では一部の劣化実験が遂行できないことがわかり、方法の見直しを図る必要が生じた。当初からは予想しない状況が生じたためその解決に多少時間がかかり、一部の劣化実験は終了できたが、27年度内に予定していたすべての実験が完全に終了するまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に出土青銅製品に含浸されたアクリル樹脂の分析を進め、より多くのデータを収集し、資料の履歴と劣化についての考察を進める。 加えて標準試料を劣化させ、その変化を追跡する。27年までの実験では樹脂そのものを熱と水分により変化させ、分子の構造的な変化を追跡したが、出土品とは異なった変化であることがわかったため、今後は青銅製品に含まれる金属の影響を中心に促進実験を実施し、これまでと同様な分析により、その変化を比較していきたい。 さらに変化が資料にとってマイナス(劣化)に進むかどうかを調査するため、樹脂の強度の低下など機能的な変化についても調べて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が遅れた理由の欄にも挙げたが、当初未使用の樹脂(標準試料)の劣化試験で設定した条件ではすべての実験が滞り無く実施できなかった。そのため、予定していた一部の実験に使用するために必要な材料や器具などの購入が次年度以降となった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に実施できなかった金属イオンや金属板を使用したアクリル樹脂の劣化促進実験実験を28年度に予定している。 これらに必要な器具や薬品などの一部を次年度使用額から消耗品費として支出する予定である。
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