研究課題/領域番号 |
26282073
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
近藤 智嗣 放送大学, 教養学部, 教授 (70280550)
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研究分担者 |
有田 寛之 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 計画・評価室係長 (70342938)
真鍋 真 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, グループ長 (90271494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンピュータビジョン / 行動分析 / 複合現実感 / 展示システム / インテリジェント化 |
研究実績の概要 |
本研究は,博物館の展示メディアに複合現実感技術を応用し,そのシステムをインテリジェント化することが目的である.平成27年度は,まず,インテリジェント化するためのベースとなる展示解説用アプリの改修を平成26年度に実施した実験時のユーザーの体験中の観察と事後に聞いた意見をもとに進めた.具体的には,前年度に引き続き,始祖鳥の板状標本を展示対象とするもので,コンテンツとしては始祖鳥についての5分程度で解説する展示解説用アプリである.その内容は,標本上に始祖鳥の復元CG,関連する写真,テロップ,音声などを重ねる複合現実感コンテンツである.その仕組みは,始祖鳥の骨格の形状をマーカーとすることでCGと標本の位置を合わせられるものであり,二次元マーカーを配置したり特殊なセンサーを設置したりすることない.デバイスにはiPad miniとiPhoneを使用し,博物館での一般的な展示ガイドとして使用できるようにしたものである.このアプリの解説用提示情報をユーザーの一般的な行動観察から,見やすい位置,また情報提示のタイミングなどを改善した. また,研究分担者の所属する国立科学博物館では,平成27年に大規模な改修が行われ,恐竜に関する展示室も大幅なリニューアルが行われた.本研究の計画では平成30年に展示室の3Dデジタイズを行い展示室全体を研究対象とすることから,展示室の状態を記録するため4K映像による詳細な映像撮影を行った.また,記録映像に複合現実感と関連するCGの技術であるマッチムーブによって,撮影したリニューアル前の映像にCGによる解説情報を提示する試みを行った.さらに,リニューアルに関連して,未だ発見されていないティラノサウルスの子どもの化石を仮説として復元する過程の映像を制作し,国立科学博物館の展示室で視聴できるようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,博物館の展示メディアに複合現実感技術を応用し,そのシステムをインテリジェント化することである.そのための第1段階として,平成26年度は,iPad miniとiPhoneを使用した複合現実感展示ガイドを開発して展示実験を行い,本システムの実用性を確認することができた.平成27年度は,前年度の実験結果をもとにコンテンツの提示方法を改良している.コンテンツをスマートフォンやタブレットのアプリとして開発でき,体験者の行動ログを記録する機能等についても目処がたち,インテリジェント化の基礎研究も可能になっている.また,平成30年度に計画している展示室全体を対象としたテーマについても平成27年度に一部を前倒して実施できている.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,引き続き,始祖鳥のコンテンツを対象としてインテリジェント化のための研究を進めるとともに,全長約1.6mの小型植物食恐竜オスニエロサウルスの骨格を対象としたコンテンツを開発して研究を進める.2つの展示標本を研究の対象とする理由は,始祖鳥は板状の小さな標本でありデスクトップの環境で体験できるが,オスニエロサウルスは全長約1.6mで恐竜としては小型であるが移動しながら見学する必要があり,体験する空間の規模が異なるからである.そのため,コンテンツおよびインテリジェント化するシステムとしても,それぞれの空間の規模に適したシステムや機能が必要になる. 始祖鳥のコンテンツについては,引き続き,インテリジェント化するために必要な行動の予測アルゴリズムを,行動分析結果をもとに開発する.また,オスニエロサウルスの骨格を対象とした開発としては,見学者の位置を計測する方法として,光学式位置センサーを採用し,その精度の向上を図る.これは,見学者が,尻尾,骨盤,頭部と数メートルの範囲を移動しながら,実際の骨格標本とタブレットのコンテンツを見比べながら体験するため,その移動の正確な位置を計測するためである.測位データからは見学者の立ち位置ごとの解説メニューを提示する機能をコンテンツに取り入れる. 評価の方法としては,これらの準備ができた段階で,国立科学博物館,放送大学の学習センターなどでイベントを開催して実証実験を行う.始祖鳥とオスニエロサウルスのコンテンツについては国内で実験を行う.始祖鳥については可搬性が高いため,共同研究を行っているドイツのKMRCおよびKMRCが連携しているドイツの博物館においても実験展示を行えるように準備を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の計画では,システム開発を外部に委託する予定であったが,採択時の決定額は大きく削減されていたため計画を見直し,可能なかぎりシステム開発は自作するようにしている.また,平成27年度は本務の都合により実験や研究成果発表の出張の時間を確保できず,本務の都合がつく次年度に振り替えることとしたためである.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,申請者が自作することが難しい3Dアニメーションの制作を外部委託すること,また,光学式位置センサーは高額なため決定額では購入が難しかったが,本年度分と合わせることで購入可能となり,当初の計画に沿った研究を進めることができる.
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