研究課題/領域番号 |
26282076
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松岡 憲知 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10209512)
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研究分担者 |
西井 稜子 国立研究開発法人土木研究所, つくば中央研究所, 研究員 (00596116)
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地形変動 / 土砂災害 / 環境変動 / 自然現象観測・予測 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
地形変動観測の継続と観測地の拡大,リモートセンシングデータやGIS分析に基づく流域斜面の精密地形分析,年輪分析に基づく長期変動史の調査を重点的に実施した。 1.日本アルプスでの短期地形変動の観測:大井川上流域の間ノ岳,東河内地区,安倍川上流域の大谷地区での観測を拡張した。谷頂部,谷壁斜面,谷底部の地形プロセスを系統的に観測するための広域的かつ総合的な観測システムを確立した。1年間の観測データを分析し,地形変動発生期とその原因を分析した。最新版のデジタル空中写真および数値標高データを入手し,GISを利用して,精密な三次元地形モデル上に空中写真から抽出した地すべり,岩壁,崖錐,沖積錐等の各地形種を重ね合わせた. 2.日本アルプスでの長期地形変動の調査:秋期に研究協力者StoffelとTrappmanをスイス・ベルン大学から招へいし,森林下の斜面,崖錐や沖積錐など堆積域において,自然林や50年以上を経過した植林を対象に樹木痕の調査を行い,約百年間の地形変動の履歴を把握した。山頂部や谷壁上部の岩盤において地質構造解析を実施し,地盤条件と岩盤崩壊や地すべりの発生様式や発生年代との対応関係を分析した。 3.欧州アルプスでの調査・観測の継続と拡張:夏にスイスに渡航し(松岡・今泉),マッターバレーでの調査・観測も継続した.対象地形(岩石氷河,岩盤崩壊,土石流堆積地)に設置した観測システムからのデータ回収,観測システムの改良と拡張を行った。1年間の観測データを回収し,落石・土石流の発生期と運動様式・トリガーについて分析した。長期地形変動や地盤構造に関しても,樹木痕解析や地形・地質分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本アルプス,欧州アルプスともに,ほぼ予定どおりの現地観測・調査を実施した。観測では,インターバルカメラによる落石や土石流の発生期の把握と発生条件の分析が進んだ一方,スイスでは頻繁な落石により一部のカメラが損傷したために,落石発生期の情報の欠如が生じた。 年輪分析も多量のデータを取得し,過去の落石・土石流発生に関する統計的な分析も進み,最近50年間における地形変動発生史の解明が進んだ。一方で,日本では自然林で調査に適する場所が少ないために,100年を超える長期変動を分析するデータはまだ不十分である。また,最終氷期以降の気候変動に伴う地形変動史の分析も進んだ。 研究成果に関しては,日本アルプスの大崩壊地における近年の土石流発生分析結果をGeomorphology誌をはじめとする国内外の雑誌に掲載するとともに,落石・土石流の動態観測の結果,GISによる地形分析結果,長期地形変動史の編年についてそれぞれ第一報を国際学会(欧州地球科学会,国際第四紀学会,国際永久凍土学会)において報告した。以上のように,成果の公表は活発に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
観測地における地形変動が当初の予想よりもはるかに活発であるため,より急速な変動を捉える計測方法,計測機器の破損を防止する対策を早急に立てる必要が生じた。そのため,スイス・日本ともに頻繁な現地調査によって頻繁なデータ回収と観測システムの維持・点検を実施予定である。 観測データ量,入手した空間情報データ量ともに膨大なため,分析に多大な時間を要しているが,最終年度は分析補助者および卒業研究や修士・博士研究の一環として当研究に従事する学生を増員するとともに,より効率的な分析手法を開発することにより,データ処理速度を増強する。 日本での長期変動分析に適する調査地については,国内の森林生態学の専門家に協力を要請して選定を進めている。また,最終目的である「U字谷とV字谷の地形変動システムの比較」に向けて,同種のデータセットの取得を推進している。 本国際共同研究の成果を国際誌や国際学会で次々と公表する準備を順次進めており,最終年度終了時までにより多くの論文の投稿をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度早々に当初計画になかった現地調査を実施する必要が生じ,その旅費に充当するため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度4月に実施する現地調査旅費に使用する。
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