研究課題/領域番号 |
26282079
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 和明 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70373074)
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研究分担者 |
田邉 晋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研部門, 主任研究員 (50415709)
納谷 友規 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研部門, 主任研究員 (90549891)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海水準変動 / 沖積層 / 最終氷期 / 沈降域 / 嘉南平野 / 台湾 |
研究実績の概要 |
本研究では,第四紀後期における沈降速度が大きく,極めて厚い沖積層をもつ,台湾の嘉南平野の堆積物を分析し,最終氷期最盛期から現在にかけての相対的海水準変動の復元を試みる. 今年度は,昨年度に嘉南平野で新たに採取した掘削長300 mのコア堆積物(NU-TN1)の詳細な記載,粒度分析,微化石分析を進めた.また,4月初旬に台湾を訪問して共同研究者と研究の内容・方向性について議論をおこなうとともに,既存コア堆積物から粒度分析用の試料を採取した.NU-TN1および既存コア堆積物から放射性炭素年代測定に適した有機物や貝殻片などを分取して,洗浄,二酸化炭素精製,グラファイト化をおこなった後,加速質量分析計(AMS)を用いた年代測定を実施した.測定試料数は約100である.これらの解析・分析を通して,NU-TN1の特徴を明らかにすることができた. とくに以下の3点,(1)放射性炭素年代測定の結果,NU-TN1コアの堆積物が最終氷期最盛期(LGM)付近以降の海水準変動に応答して堆積してきたこと,(2)深度130 m付近より上位の層準で海水の影響が強くなってきたこと,(3)これまでに推定されている海水準変動曲線やアイソスタシーを考慮に入れた相対的海水準変動曲線との比較から,NU-TN1地点が年間4 mm程度で沈降していること,が示唆された.沖積低地で得られた1本のコアからLGM以降の記録がほぼ連続して得られたことの意義は大きい. 研究成果の一部については,国内学会においてポスター発表(英語)をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに掘削したコア堆積物の特徴について学会で報告することができた.また,コア堆積物の放射性炭素年代測定により最終氷期最盛期から現在に至るまでの年代を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
掘削長300 mのオールコア堆積物の解析・分析を引き続きおこなう.深度180 m付近で最終氷期最盛期に近い年代が得られているため,粒度分析などをできる限り多くの層準でおこない,時間解像度を上げることに努める.平成28年度末に実施した年代測定の結果を検討して,コア堆積物の堆積時期や堆積速度を決定する.また,年代測定をさらに実施するかどうかを決定する.年代測定を追加実施する場合は,試料の選定・洗浄(酸・アルカリ処理など),二酸化炭素の精製,グラファイト化,放射性炭素濃度測定を早い時期に進めていく. オールコア堆積物および既存コア堆積物の解析・分析結果をもとに,堆積相の特徴や堆積システムの発達過程を考慮した上で,最終氷期最盛期以降の海水準変動の復元や完新世中期以降のデルタの発達過程の検討をおこなう.この際,嘉南平野のテクトニクスなどを考慮した上で平野の長期的な沈降速度を評価する.また,グレイシオハイドロアイソスタシーにともなう地殻の変形については,モデリングを専門とする他の研究者の協力を仰ぎながら,その影響を評価していく.海水準変動については,これまでデータがあまり得られていない,最終氷期最盛期前後の海水準の上昇・下降および最終氷期最盛期から完新世初期にかけての海水準上昇過程を詳細に検討していく.デルタの発達過程については,発達開始時期に加え,河道の移動(アバルション)などにともなうローブ位置の変化の有無などを評価する.また,これらの結果を,他地域で得られた結果と比較検討する. 以上の解析結果については,国内学会を中心に発表していき,投稿論文作成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
年代測定を追加で実施する可能性が出てきたため,基金分の一部を次年度使用とすることにした.
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次年度使用額の使用計画 |
コア堆積物の年代測定に使用する予定である.
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