研究課題/領域番号 |
26282080
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松山 洋 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50264586)
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研究分担者 |
齋藤 仁 関東学院大学, 経済学部, 講師 (00709628)
泉 岳樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (10336513)
中山 大地 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (90336511)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌雨量指数 / 1時間雨量 / 解析雨量 / 土砂災害 / CL(Critical Line) / 九州北部豪雨 / 無人航空機 / 空中三角測量 |
研究実績の概要 |
平成 26 年度には,平成 25 年度の予備解析で得られた知見(特に、土壌雨量指数と1時間雨量の組み合わせによって決められる危険域に突入する閾値の設定方法 ... CLと呼ばれる)が妥当かどうかを検討するための作業を行なった。このため,CL を設定するのに広く用いられている RBFN というプログラムを購入した。 1988 年 4 月以降の毎時の解析雨量のデータを編集し,これから土壌雨量指数を計算した。また,RBFN を用いて,土壌雨量指数と 1 時間雨量の組み合わせから CL を自動的に決定するためのプログラムを作成した。この作業が結構大変だったため,今年度は,(a)土砂災害警戒情報が出された時刻,(b)土壌雨量指数と1時間雨量の時間変化(SL と呼ばれる)が CL を超えた時刻,(c)実際に土砂災害が発生した時刻,の関係について検討するまでには至らなかった。 2014 年 5 月と 8 月には,「平成 24 年 7 月九州北部豪雨」の斜面崩壊地(阿蘇地域)のモニタリング(その後の回復の状況)を行なった。人間および無人航空機による写真撮影を行なって高解像度の地形データを作成し,これから地形変化に関する定量的な考察を行なった。 気象業務支援センターから毎時の解析雨量等を受信する計算機が陳腐化し,更新する時期になっていたため,サーバを 1 台購入した。また,研究代表者のデスクトップマシンおよびノードパソコンを購入して,上述した CL の計算を行なった。研究成果は国内(奈良,春日井,柏,千葉,東京)および国外(台湾)で発表した。印刷になった論文はないが,現在,平成 26 年度の研究成果を踏まえて,英語での投稿論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書には,「九州北部を対象として解析を行ない,平成 24 年九州北部豪雨を事例に解析を行なう。熊本県による降水量の観測値は別途入手済みなので,(1)平成 25 年度の予備解析で得られた CL,(2)熊本県による CL,(3)RBFN によって作成される CL の比較を行なう」と記述したが,RBFN を用いて CL を自動的に作成するための作業が結構大変だったため,CL と SL の比較までは及ばなかった。この点については,平成 27 年度に率先して研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成 26 年度に解決できなかった課題に引き続き取り組む。 さらに,平成 26 年度に得られた知見を基に,解析を日本全国に広げる。データは申請者たちの研究者で整備されており,リアルタイムで受信している解析雨量を用いる。 具体的には,「2006~2008 年における日本全国の土砂災害発生事例」に対して,「1988 年から土砂災害が発生する前年(カレンダー年)」までの一雨」を求め,全ての一雨事例に対して「土壌雨量指数-1 時間雨量」の散布図を作成する。一雨は,「24 時間の連続無降雨によって区分される降雨」であり,一雨期間を求めるプログラムは開発済みである。データは 5 km メッシュの解析雨量を用い,土壌雨量指数,1 時間雨量ともに 50 年確率値で規格化して,メッシュ間の比較を可能にする。既往最大値でなく 50 年確率値を用いるのは,この値が,気象庁による「今まで体験したことのない大雨」の基準であるからである。50 年確率値は,統計解析ソフト R を用い,確率分布は気象庁同様,Gumbel 分布を用いる。 さらに,解析雨量とともに受信している 6 時間先までの降水短時間予報を用いて,土壌雨量指数と 1 時間雨量の時間変化(SL と呼ばれる)を作成し,実際の土砂災害発生状況を再現できているか確認する。現在,申請者たちは 6 時間先までの降水短時間予報を受信しているが,これが使える状態になっていないため,まず使える状態に持っていく。そしれ,個々の土砂災害発生事例について,6 時間先までの降水短時間予報を用いて SL と CL (土壌雨量指数と 1 時間雨量の組み合わせによってきめられる,土砂災害発生の危険域に突入する閾値の設定方法のこと) の図を作成し,土砂災害警戒情報が出された時刻,SL が CL を越えた時刻,実際に土砂災害が発生した時刻の関係について検討し,土砂災害警戒情報が出されるタイミングが妥当かどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成 26 年度の研究および支出はほぼ計画通りに終了し,残額を無理に年度内に執行する必要がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成 27 年度以降の研究費,特に物品費として使用する。
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