研究課題/領域番号 |
26282086
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西崎 一郎 広島大学, 工学研究科, 教授 (80231504)
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研究分担者 |
林田 智弘 広島大学, 工学研究科, 准教授 (20432685)
関崎 真也 広島大学, 工学研究科, 助教 (70724897)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デマンドレスポンス / 2レベル数理計画問題 / エージェントベース・シミュレーション / 電力市場 |
研究実績の概要 |
単一の電力小売業者と一般家庭,商業,製造業の3種の最終消費者集団の間の電力取引モデルを2レベル確率計画問題として定式化し,この問題に対する近似的解法を開発した.数値計算のためIEEEの配電ネットワークなどを取り上げ,電力系統制約なども考慮した問題を用いて,開発したアルゴリズムの利用可能性や有効性を確認し,数値計算の結果を分析した.その成果として,3編の和文論文を電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)および電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌)に発表し,1編の英語論文も雑誌International Journal of Electrical Power and Energy Systemsに発表した.これらの研究は近似解法なので,問題を商用ソルバで解ける形式に変換して厳密解を計算する手法を開発し,論文としてまとめ,国際学術雑誌に投稿中である. 上述のモデルでは,経済主体は合理的な行動をとると仮定しているが,現実の経済主体は必ずしも厳密に最適な行動を選択しているとは限らず,むしろ試行錯誤的に対応し,その過程で学習して適切な行動を選択するとも考えられる.この観点から,エージェントベース・シミュレーションでのモデル化を考え,1編の論文としてまとめ,システム制御情報学会誌に発表した. さらに,電力会社が需要家にインセンティブを与え,電圧を制御しながら,各需要家の公平性を考慮した配電系統の運用モデルを定式化し,数値例を用いて有用性を確認しており,この研究は2編の論文としてまとめ,システム制御情報学会誌に発表した. また,配電系統の管理に関して,複数の目的を考慮した研究を実施し,1編の英語論文も雑誌Journal of Multi-Criteria Decision Analysisに投稿し,受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果が得られ,6編の和文論文を電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌),電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌),システム制御情報学会誌に発表し,1編の英語論文も雑誌International Journal of Electrical Power and Energy Systemsに発表した.1編の英語論文も雑誌Journal of Multi-Criteria Decision Analysisに受理された.さらにこれらの成果に続く研究実績の概要で示した成果も順に発表していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
変動料金モデルに対しては,電力小売業者は電力供給量のみならず,時間当たりの電力料金表を決定する数理モデルでシミュレーションを実施し,フラクタイルモデルとして定式化した.消費者集約モデルの考えをモデルの中に取り入れ,集約業者を小売業者とし,電力市場での取引をモデル化している.本年度中には論文としてまとめ,学術雑誌に投稿する. 変動料金の複数供給者モデルに対してのエージェントベース・シミュレーションにおいて,電力小売業者エージェントは,環境情報をもとに価格を決定し,消費者エージェントは価格を参照して,小売業を選択するモデルを考える.学習モデルとしては,電力システムへの適用に相応しいモデルとして学習クラシファイアシステムを取り上げ,シミュレーションシステムを開発中であり,本年度中に完成させる予定である. 複数供給者モデルの数理モデルにおいて複数の電力小売業者を考慮することは,電力小売業者の数だけ数理計画問題を取扱うことになり,変動料金モデルを基礎として,マルチリーダー・マルチフォロワーゲームを定式化し,2人供給者・2人消費者のモデルにおけるNash均衡解を計算することに成功した.この成果を多数供給者・多数消費者のモデルへ拡張した上で導出したNash均衡解に対する結果を分析し,本年度には論文としてまとめたい.さらに,最適応答を直接モデル化するのではなく,最適応答を価格弾力性関数に近似した均衡問題を定式化することで,より大規模な問題における均衡解を高速に近似する手法の開発へ着手する予定である. 報酬ベースモデルと再生可能エネルギーモデルを統合し,消費者間の電力使用量を調整する枠組みは昨年度考察したが,さらに協力ゲームによって定式化し,消費者間の協力の安定を考慮したモデルを開発し,数値シミュレーションによって結果を分析する予定である.
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