研究課題/領域番号 |
26282087
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石野 洋子 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (90373266)
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研究分担者 |
高橋 真吾 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20216724)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マーケティング / 社会システム工学 / 社会シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は,消費者の商品選択行動が創発する市場動向に関する社会システムを対象とし,実証的調査で得られたマーケティング・データに基づく,新規なモデル化方法によるエージェントベース・シミュレーション(ABS)の構築を目指す.我々はエージェントの行動モデルはベイジアンネットワーク(BN)を用いて表現できると考え,以下の方法論の提案を行った.(1) 対象とする市場について,既存のデータ等からエージェントの行動モデルに関連する要因を洗い出し,考えられる仮説を立てる.(2) (1)で抽出した要因について消費者アンケートを作成,実施する.(3) 得られたアンケート結果から,カイ二乗法や対数線形モデルなどで仮説を検証する.(4) 得られた要因ネットワークに基づき,BNを使って条件付確率を学習し,確率推論を実施してパラメータを取得する. まず研究対象を民間医療保険市場に限定し,医療保険の加入には「そろそろ感」が存在しているという仮説を立て,2014年8月に800人に対してインターネット調査を実施した.カイ二乗検定や対数線形モデルなどの手法を用いてモデルの検証を行ったが,一部についてはアンケートの不備により十分に確認できない構造が生じてしまった. 以上を踏まえ,本年度は,主に不十分だった以下の2点を修正したアンケートを実施した:(1) 対数線形モデルでの分析により,構造妥当性において新たに関連が認められたノード間あるいは妥当性がなく切断されたノード間をとりこんだ形で行動モデルを修正し,アンケートを設計する, (2)「そろそろ感」は現在の代替指標ではとくに有効な役割をモデル上で果たしていないので,アンケートでは「そろそろ感」自体を説明した上でその影響を直接聞く.アンケートは,2015年12月に,800人に対して実施した.現在,この結果を分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従って予定通りに研究を進めており,大きなトラブル等の発生もなかった.
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今後の研究の推進方策 |
約1年経って同様の市場でのアンケートから得られたデータを利用し,1年前と比較することで,保険市場という消費者の選好が変化しやすい市場で本手法を適用して,その頑強性を確認する. その一方で,これまでに作成したABSシステムを用いて詳細なシナリオ分析を行い,提案するモデルの解釈・評価を再度行う.シナリオ分析では,意思決定者が考えたい分析対象システムの状況シナリオおよび政策シナリオをそれぞれ複数個用意する.各シナリオの組合せごとに,数十回試行が行われ,社会の変化の可能性を示し,その可能性が現れるメカニズムを解釈する.特徴的な試行においてその結果が生まれる過程をエージェントの内部モデルの変数の挙動を追うことで解釈する.この分析を通じて,分析者の過度な解釈を入れることなく,対象システムの振舞いの傾向を理解する.これらの分析を通じて,モデリング方法を修正しながらシステムの性能の向上を図る.その後,これらの成果を論文としてまとめて公表する. また,別の市場に対しても,構築した方法論が適用できるのかを検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に行ったアンケートの分析結果を研究メンバーで検討した結果,当初考えていたモデルに不備が生じたため,計画を変更し2015年度にも消費者アンケートを実施することにした.それに伴い,研究成果を発表する国際学会を変更した.このため,研究費の使用用途が若干計画とは異なるものとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
民間医療保険市場以外の別の市場データでも提案手法の検証を行うことを予定している.特にB to B市場についてはこれまでにABSシステムを用いた研究はほとんどない.そこで,大腸癌の治療薬を処方する医者をエージェントとするABSシステムを構築する.その結果を,2016年度人工知能学会や他の国際学会で発表していく予定である.また,B to CのABSシステムについては,医療保険以外の別の商品を取り上げ,アンケートを実施し,本方法論が適用可能かを検証する.加えて,調査のための出張費,書籍・マニュアル等の消耗品費,論文校閲費(謝金等)を想定している.
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