研究課題/領域番号 |
26282091
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
高野倉 雅人 神奈川大学, 工学部, 助教 (00333534)
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研究分担者 |
川上 勝 自治医科大学, 看護学部, 講師 (50382958)
石黒 圭応 東京工科大学, 医療保健学部, 准教授 (60367430)
滝 聖子 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (50433181)
山田 哲男 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (90334581)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経営工学 / サービスの質 / 効率性 / インダストリアル・エンジニアリング / 患者安全 / ホームケア |
研究実績の概要 |
平成26年度は,ヘルスケア・デリバリーシステムの問題点の分析と定義,予備実験の実施,研究倫理に関する考察を行った. ①問題点の分析と定義:はじめに日本のヘルスケア・デリバリーシステムの問題点について,社会保障と税の一体改革や医療保険・介護保険制度などの社会システム,および医療施設・滞在型ケア施設・訪問型ケア施設などの医療福祉サービスの観点から分析して,本研究で取り組むべき課題とその優先順位を検討した.また老人保健施設を訪問して,現場が抱えている問題点を調査した. ②予備実験の実施:①で訪問した老人保健施設を対象として,患者安全やフロー効率などの基礎となる介護職員の業務を可視化するため,IE手法を用いて介護業務を分析する予備実験を実施した.介護業務を可視化することで,サービスの質向上や効率化につなげる作業を定量的に表現でき,ボトルネックとなる作業も抽出できた.その成果は,今後の患者安全・ホームケア・フロー効率の研究に活用できる. ③倫理的考察:本研究で収集するデータは個人情報を含むため,倫理的な配慮が必要である.②で述べた予備実験や今後の本実験に向けて,老人保健施設の入居者などのプライバシーに配慮した調査方法や,個人情報に配慮したデータ収集・分析の方法を確立した. ④現状調査と成果発表:米国において,現地の研究者とヘルスケア・デリバリーシステムの現状と課題について議論した.また研究成果をNortheast Decision Science Conference (NEDSI2015, Cambridge, USA)や日本経営工学会春季大会(千葉・東京理科大学)・秋季大会(広島・広島大学)などで発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,医療・福祉サービスに関わる人びとと彼らのナレッジ,施設の3M&I(ヒト,モノ,カネ,情報)を有機的に統合できる総合的なシステム構築とそのマネジメントを目標としている.平成26年度は,ヘルスケア・デリバリーシステムの問題点の分析と定義,予備実験,倫理的考察を行った.前述のように,日本の現状を踏まえて問題点を整理して取り組むべき課題を明確にしたこと,予備実験で患者安全・ホームケア・フロー効率の基礎となる研究方法を確立したこと,プライバシーや個人情報に配慮した研究方法を確立して,その一部は研究倫理委員会の承認を得ていることなどの成果を得ている.平成26年度の研究実施計画をほぼ達成できており,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,患者安全に向けた見守りマネジメントシステムの構築,サービスの質向上と効率化に向けた作業者工程分析によるプロセス改善,ヘルスケアサービスを対象にした技能伝承サービスの開発に関する研究に取り組み,その成果を発表する.また平成26年度から引き続き,国内・海外での現地調査や倫理に関する考察にも取り組む. ①患者安全:小型センサとマイコンを利用して,病院や老人保健施設での患者・入居者の状態を測り,その情報からサービスの質を向上させる見守りマネジメントシステムの構築に取り組む. ②作業者工程分析と改善:滞在型施設だけでなく訪問型サービスも対象にして,作業効率とサービスの質を同時に向上させるプロセスや施設の改善策を提案して,その有効性を検証する. ③技能伝承支援システムの開発:眼球運動計測装置などを使い,経験の豊富な介護職員の質の高いスキルを定量化し,その結果と情報技術とを活用して効率的な業務および質の高い介護スキルを伝承できるシステムを構築する. ④成果発表および現状調査・情報収集:研究成果を国内学会(日本設備管理学会春季研究発表大会など)や国際会議(2nd Int. Conf. on Health Care Systems Engineeringや16th Asia Pacific Industrial Engineering and Management Conferenceなど)で発表して,他の研究者からの評価を仰ぐとともに,ヘルスケア・デリバリーシステム研究の情報を収集する.また,学術論文として学会誌への掲載を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年5月にフランスで開催される2nd International Conference on Health Care Systems Engineeringでの研究発表を予定しており,その参加費および旅費としての使用を予定している.国際会議の申し込みや旅費手続きの時期の関係で,平成27年度になってからの執行となったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年5月に,2nd International Conference on Health Care Systems Engineeringの参加費および旅費として使用する.
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