配管や橋梁などの大型構造物の健全性を,高効率で非破壊的に評価する手法について検討してきた.特に,レーザ弾性波源走査法による薄板材料の損傷画像化技術に対し,弾性波励振手法の改良,システム構築,損傷画像化の理論的な原理解釈を実施してきた. 当該年度では,複雑な薄板状材料に対する適用可能性の検討,高速で画像化する際の影響評価,遠隔からの計測による配管内の人工減肉の画像化などの実用化に向けた基礎データを蓄積した. 前年度の検討において,レーザ弾性波源走査法による損傷画像化技術では,弾性波の励振源であるレーザ照射位置近傍の薄板の曲げ剛性や損傷深さが発生する屈曲振動のエネルギに影響を与えることが理論的に示されていた.つまり,弾性波励振用のレーザ照射位置の状態により,受信される弾性波振幅が変化することを意味しており,この性質を利用すると弾性波の励振点と受信点を結ぶ直線の伝搬経路が存在しないような複雑な薄板材料でも損傷画像化が可能であるといえる.そこで,実験的に検証したところ損傷画像とともに,薄板材料全体の共振パターンも得られることが分かった.さらに,この共振パターンを低減するため,様々な周波数に対する画像を合成する手法を開発した. 次に,高速で損傷画像を取得する方法について検討した.高速化のためには,高繰り返しで弾性波励振用のレーザを走査点ごとに照射する必要がある.非常に速い繰り返しでは,薄板内の残響の影響で画像が乱れることが示され,高速化には限界があることが示された. 最後に,内部に減肉を模擬した人工傷をつけた枝分かれ管に対し,6m離れた位置からのレーザ照射によって損傷画像化を行ったところ,人工減肉の画像が適切に得られ,遠隔からの計測による損傷画像化の可能性を示すことができた.
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