研究課題/領域番号 |
26282099
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石川 真志 徳島大学, 大学院ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10635254)
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研究分担者 |
八田 博志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 専任教授 (90095638)
笠野 英行 日本大学, 工学部, 助教 (20514417)
小笠原 永久 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (60262408)
山田 浩之 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 講師 (80582907)
宇都宮 真 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (70450707)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / 赤外線サーモグラフィ / CFRP / レーザー走査加熱 |
研究実績の概要 |
本研究では高所や遠方に位置する大型の構造物に対する高効率な検査の実現の為、対象物に対して遠隔からの加熱を行い、その後の表面温度変化から内部異常部の検出を行う手法を提案している。本年度はこの遠隔加熱装置としてエネルギーの距離減衰の小さいレーザー加熱装置を導入し、その効果について基礎検討を行った。上記検討の第一段階として人工欠陥を有する小型のCFRPサンプルに対し、約1 m離れた距離からCO2レーザーによる走査加熱を行い、加熱後に得られる温度画像における内部欠陥検出能力の評価を行った。その結果、一般的にアクティブサーモグラフィ検査で使用される近距離からのフラッシュランプ加熱と同等の欠陥検出能力が1 m遠方からのレーザー加熱試験においても得られることが確認された。このことは、レーザー加熱を用いることで従来方法よりも遠方に位置する対象物に対して従来方法と同等の検査が可能であることを示す。 加えて、一般的にパルス・フェイズ・サーモグラフィ法として知られる手法を基に、レーザー加熱後に得られた温度データにフーリエ変換を行うことで位相画像へ変換し、その効果を検証した。過去の報告では位相画像を利用することで加熱時に生じる加熱ムラなどの影響を低減し得ることが示されているが、本実験においては走査加熱の結果生じる加熱時間差に伴う温度勾配が位相画像に変換することで低減されることが確認された。このことは走査加熱に伴うデメリットの低減を意味する。 また、検査時間の短縮による検査の高効率化を目指し、位相変換後の高周波数領域の位相値を検査に使用する方法についても検討を継続している。具体的には一次元熱解析により高周波数領域に生じる欠陥部位相差の大きさと、その周波数から逆算される検査時間を推測し、本手法の有効性について解析的な評価を行った。ここで得られた解析結果については次年度に実験的な検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は遠距離加熱減として計画していたCO2レーザーの導入を行い、これによる基礎実験から当初想定していた効果(従来方法よりも遠方に位置する対象物に対する検査の実現)が得られることを確認した。また、レーザー加熱後の温度画像の位相画像変換による効果も確認されたことから、提案していた検査システムの実証に向け、一定の成果が得られたと考える。 また、本研究での課題の一つに挙げていた検査時間の短縮方法の検討についても、本年度は提案手法(位相画像変換後の高周波数領域位相差の利用によるフーリエ変換前温度データ取得時間の短縮)について解析的な評価を行い、検査時間の大幅な短縮が可能となることが予測された。実証実験は未着手であるが、次年度に期間内でその実施は十分可能である。 さらに、提案手法を用いた検査の対象物の一つとしてコンクリート構造物も挙げていたことから、本年度は人工欠陥を有するコンクリートサンプルの作製を行い、これに対するレーザー加熱による試験も実施した。試験の結果、作製サンプル内の欠陥の検出が可能であることを確認した。本結果から、提案手法のコンクリートへの適用に関する検討についても、おおよそ順調に進捗していると言える。 やや遅れている点として、検査精度のさらなる向上を目指したノイズ低減に関する点が挙げられる。温度データへの移動平均、温度画像に対するフィルタリングなどを検討したが、実験的にはまだ顕著な効果が得られていない。一方で、解析的にはフーリエ変換前の温度画像に対する移動平均フィルタなどの画像処理を行うことで、フーリエ変換後の位相画像においても広帯域でのノイズ低減が得られることが示されており、今後はこの詳細な検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
遠距離加熱減としてレーザー装置を利用した検査方法の基礎的な試験の実施、およびその効果の確認が得られたことから、次年度は大型構造物を想定したより具体的な検査の実用性評価を目指し、大型試験片の作製とその遠方からのレーザー加熱検査を試みる。具体的には人工欠陥を有する大型のCFRP試験片をレーザー加熱源から数m遠方に設置し、その加熱効果、および温度、位相画像からの欠陥検出能力の評価を行う。同様に数m遠方に設置したコンクリート試験片に対する同様の検査も行い、土木構造物に対する提案手法の有効性も評価する。 また、検査時間短縮方法については、本年度の検討で得られた解析的な効果について実験的な検証を行う。本検証においては、第一段階として一般的なフラッシュ加熱により行われた試験について検査時間短縮効果の検証を行った後に、レーザーによる遠隔加熱後の検査結果に対しても同様の検討を行い、その効果の確認を行う。 検査精度の向上の為のノイズ低減手法の検討に関しては、本年度に実施された各種の検討結果を再度精査するとともに、位相画像へ変化後の位相データ中に生じるノイズの特性について改めて詳細な検討を行い、提案手法に最適なフィルターの検討を行う。解析的な検討を継続するとともに、その結果を順次上記の各実験結果にも適用し、実験的な効果の確認も並行して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた遠距離加熱減(CO2レーザ装置)の導入がやや遅れたことに伴い、実験の実施、進捗状況から計画していた国際会議等への本年度の参加を見送る判断を行った。この為、予定していた学会参加旅費等が残額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の成果を踏まえ、次年度は当初予定されていた国際学会等への参加を予定しており、このための旅費として次年度研究費と合わせての使用を予定する。加えて、論文発表などに際する諸経費としての使用も検討する。
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