研究課題/領域番号 |
26282100
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
西本 哲也 日本大学, 工学部, 教授 (30424740)
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研究分担者 |
本村 友一 日本医科大学, 医学部, 助教 (20464406)
宇治橋 貞幸 日本文理大学, 工学部, その他 (80016675)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 防災 / 救命 |
研究実績の概要 |
胸部や腹部に外力が加わる受傷機転は,動的な負荷として自動車事故や歩行者事故などの交通事故,準静的な負荷として災害発生時に地下鉄出入り口,電車内などで人がパニック状態で密集する群集事故がある.我が国では年間の交通事故の2割にあたる約1万人が胸部・腹部を受傷して死傷している.群集事故では世界各国で数百人規模の死亡者が発生している.胸腹部の傷害は,負荷エネルギと傷害,その負荷持続時間の定量的な関係が分かっておらず,十分な安全対策を講じることができないのが死傷者発生の原因である.平成27年度は平成26年度に引き続き次の研究を実施した. 1.胸腹部へ衝撃力が加わる状況の調査として,交通事故による車体変形と乗員傷害の解析を目的として47件の交通事故実態調査を実施し,平成26年度と合計して93件の調査件数となった.93件について解析した結果,シートベルト等の乗員拘束装置の影響や骨年齢の影響を受けて65%が胸部傷害,35%は腹部傷害が発生しており,胸部か腹部どちらかの傷害が発生している乗員は73%と高い割合を占めることが分かった. 2.胸腹部へ静的な負荷が作用した場合を想定し,動物実験と被験者実験を実施した.動物実験は平成26年度に引き続き平成27年度は2頭を用いて体重の1倍,2倍の負荷が作用した状況を再現し,そのときのバイタルサインを計測した.本年度の実験では人工換気時の酸素を大気と同じ濃度で実施した.また被験者実験は,平成26年度18人の被験者に加え,平成27年度は19人の被験者実験を実施した.被験者実験では体重の1倍までの負荷を連続的負荷を加える実験とし,胸部荷重または腹部荷重を基準として,荷重割合を1倍以内になるようにして実験を実施した.実験の結果,胸部と腹部では胸部荷重が肺活量や一回換気量に与える影響が支配的であり,呼吸様式に胸部荷重が及ぼす影響が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
93件の交通事故調査,群集事故に関する4頭の動物実験,37人の被験者実験を実施しており,最終目標である胸腹部の安全ガイドラインに必要な多数の基礎実験と解析を実施できたため.
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今後の研究の推進方策 |
交通事故の実態調査では,平成26,27度に引き続き,日本大学と日本医科大学による交通事故実態調査を継続し,年間50件の重症,死亡事故の事故調査解析を実施する.特に胸腹部に顕在化する傷害を詳細に調査し,胸腹部の傷害解析のために骨密度計により骨密度を調査し,骨強度の低下が胸部・腹部傷害に及ぼす影響を詳細に解析する. 次に胸部腹部傷害(群集事故)の被験者および動物実験では,過去2年間に引き続き,胸腹部圧迫による窒息を模擬した被験者実験と動物実験を実施する.軽度の圧迫では被験者,窒息死に至る高負荷の圧迫は実験動物を用いて実験を行う.被験者実験ではより耐性の低い成人女性を対象とした被験者実験を実施する.呼吸は胸部と腹部の境界にある横隔膜の運動が重要な役割をしているが,胸部荷重,腹部荷重の負荷割合に基づく衝撃耐性を明らかにする.そして交通事故解析と胸腹部圧迫実験に基づく安全ガイドライン作成のために,被験者と動物実験に基づき,人体重の何倍の荷重が負荷されるまで人体は許容できるのか,圧迫死の防御のための耐性限界を胸腹部圧迫の耐性リスクカーブを用いて提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
群集事故被験者実験について,保有する既存の肺機能測定装置での実験を実施したため.
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次年度使用額の使用計画 |
群集事故被験者実験について,肺機能測定を時間変化で測定するために新規に肺機能測定装置を導入する.
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