研究課題
胸部や腹部に外力が加わる受傷機転は,動的な負荷として自動車事故や歩行者事故などの交通事故,準静的な負荷として災害発生時に地下鉄出入り口,電車内などで人がパニック状態で密集する群集事故がある.我が国では年間の交通事故の2割にあたる約1万人が胸部・腹部を受傷して死傷している.群集事故では世界各国で数百人規模の死亡者が発生している.胸腹部の傷害は,負荷エネルギと傷害,その負荷持続時間の定量的な関係が分かっておらず,十分な安全対策を講じることができないのが死傷者発生の原因である.平成28年度は平成26-27年度に引き続き次の研究を実施した.1.胸腹部へ衝撃力が加わる状況の調査として,交通事故による車体変形と乗員傷害の解析を目的として47件の交通事故実態調査を実施し,平成26-27年度と合計して総計140件の調査件数となった.対象となった181人について解析した結果,シートベルト等の乗員拘束装置の影響と骨年齢の影響を受けて60.8%が胸部傷害,26.5%は腹部傷害が発生しており,胸部か腹部どちらかの傷害が発生している乗員は68.5%と高い割合を占めた.また超音波式骨強度測定を実施したところ骨強度低下が胸部傷害の重症化に影響を及ぼし,胸部傷害では側胸部骨折が頻発することが明らかになった.2.胸腹部へ静的な負荷が作用した場合を想定した被験者実験を実施した.平成26年度延べ18人,平成27年度延べ19人を実施し,今年度28年度では延べ33人の被験者実験を実施した.特に今年度は同じ女性被験者を用いて胸部と腹部荷重の割合を変化させて,それら荷重の影響を解析するための実験に主眼をおいて実施した.実験の結果では,胸部と腹部を比較すると胸部荷重が肺活量や一回換気量に与える影響が支配的であり,負荷荷重が体重の50%であっても胸腹部の負荷により1時間以内に呼吸不全に至る可能性が明らかになった.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Accident Analysis and Prevention
巻: 98 ページ: 266-276
10.1016/j.aap.2016.09.028
自動車技術会論文集
巻: 48 ページ: 103-109
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http://www.mech.ce.nihon-u.ac.jp/~tnishi/