胸腹部へ衝撃力が加わる状況として,運転席乗員でシートベルト着用者の前面衝突時のシートベルトによる胸部骨折の受傷状況をCT像を用いて解析した.その結果,胸部骨折の大多数はシートベルトパスの範囲外の側胸部で多発していることが分かった.胸部損傷は直接的な外力ではなく,外力を受け骨が変形することによるたわみで骨折が発生すると考えられた. 次に群集事故によって胸腹部へ圧迫が加わった場合の呼吸変動を観察するための実験モデルを構築した.圧迫による苦しさの増加に伴い,一回換気量と肺活量は減少傾向を示した.本研究の結果,胸部への圧迫が20kg以上で20分以内に呼吸困難が発生する可能性があることが分かった.
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