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2015 年度 実績報告書

台風進路予測の変動メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 26282111
研究機関京都大学

研究代表者

榎本 剛  京都大学, 防災研究所, 准教授 (10358765)

研究分担者 山崎 哲  国立研究開発法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (20633887)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード自然現象観測・予測 / 数値予報 / 熱帯低気圧
研究実績の概要

2013年台風第3号(Yagi)の進路の事例でALERA2 (水平解像度T119,約100 km格子)を初期値として,鉛直層数48,水平解像度T119とT239 (約50 km格子)のAFESで5日間のアンサンブル予報実験を行った。T239の方が北東寄りのベストトラックをよく再現し,メンバー間の進路のばらつきもT119より広がっている。米国環境予測センター(NCEP)の初期値をT239のAFESに適用した場合でも,同様の結果が得られた。
台風の進路予報における初期値依存性を調べるために,中国気象局のGRAPESを用いて2008,2009年に中国大陸に上陸した16個の台風を実験対象とする初期値代替実験を行った。初期値をNCEPからヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)に変更することで進路予報が改善する傾向があること,台風中心付近の力学場の変更や初期時刻における台風強度の表現が進路予報の改善に寄与していることが分かった。また,数値予報モデルの改善を目指す上で対象とすべき,初期値の代替では進路予報が改善しない事例(Yamaguchi et al. 2011)を抽出した。
台風の進路予報において,単独の数値予報よりもアンサンブル平均予報(コンセンサス予報)は統計的に進路予報誤差が小さいことが先行研究で明らかとなっている(例えば,Yamaguchi et al. 2008)。そこで,世界の主要な数値予報センターが運用している全球モデルによる12の台風進路予報を用いてコンセンサス予報の有効性を調査した。最新の観測データによって進路予報を補正する「選択的アンサンブル手法」(Qi et al. 2014)の有効性は限定的であること,精度の良い数値予報センターだけを用いたコンセンサス予報は気象庁の台風進路予報を改善できる可能性があることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度更新され地球シミュレータに対するAFES及びNICAMの最適化や,アンサンブル予報システムの構築,AFES及びNICAMを用いた実験を予定通りに実施することができた。また「たすき掛け」実験を進めるため初期値の相互変換ツールを作成した。
この課題で取り組んできた課題に関する成果発表や国民に対する成果の還元が進んだ。GRAPESを用いた初期値代替実験研究成果は国際雑誌(Advances in Atmospheric Sciences)に投稿し受理された。コンセンサス手法による台風進路予報については,研究成果を国際雑誌(Tropical Cyclone Research and Review)に投稿した。特筆すべきは,2015年の台風シーズンからコンセンサス手法による台風進路予報が気象庁で採用されたことである。その結果,2015年は1日先から5日先までのすべての予報が,これまでで最も高い精度となった。
さらに,この課題に関連して,ECMWFの教育研究版全球予報モデルOpenIFSの講習参加や,中国気象局の研究者の滞在など国際共同研究が進展した。
以上から本課題は順調に進展していると判断する

今後の研究の推進方策

水平解像度の進路予測に対する影響をさらに詳しく調べるため,複数解像度での実験を行うとともに,静力学平衡を仮定しているAFESとしていないNICAMの結果を比較して非静力学効果について検討する。現業予報モデルを実行する上での課題は一部のデータが不足していることであるが, OpenIFSを用いた共同研究の下,ECMWFに初期値から提供を受けることにより対応する。

次年度使用額が生じた理由

パソコンやハードディスクの価格対性能比は時間とともに改善する。そこで適切な時期に物品を調達し研究費を有効に利用するため,次年度に使用することとした。

次年度使用額の使用計画

平成27年度に数値実験に用いる現業数値予報モデルを追加しそのモデルのための初期値作成プログラムを作成した。このシステムの開発やこれを用いた実験に必要なパソコンやハードディスクを平成28年度に調達する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] 欧州中期予報センター(欧州連合)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      欧州中期予報センター
  • [国際共同研究] 中国気象局(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国気象局
  • [雑誌論文] Possible sources of forecast errors generated by the GRAPES model for landfalling tropical cyclones. Part I; initial uncertainties2016

    • 著者名/発表者名
      Zhou, Feifan and Munehiko Yamaguchi
    • 雑誌名

      Adv. Atmos. Sci.

      巻: 33 ページ: 未定

    • DOI

      10.1007/s00376-016-5238-4

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The TIGGE Project and Its Achievements2016

    • 著者名/発表者名
      Swinbank, Richard, Masayuki Kyouda, Piers Buchanan, Lizzie Froude, Thomas M. Hamill, Tim D. Hewson, Julia H. Keller, Mio Matsueda, John Methven, Florian Pappenberger, Michael Scheuerer, Helen A. Titley, Laurence Wilson, and Munehiko Yamaguchi
    • 雑誌名

      Bull. Amer. Meteor. Soc.

      巻: 97 ページ: 49ー67

    • DOI

      10.1175/BAMS-D-13-00191.1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Simple sensitivity analysis using ensemble forecasts2015

    • 著者名/発表者名
      Enomoto, Takeshi, Syozo Yamane and Wataru Ohfuchi
    • 雑誌名

      J. Meteor. Soc. Japan

      巻: 93 ページ: 199ー213

    • DOI

      10.2151/jmsj.2015-011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 北西太平洋域における台風発生予測可能性2015

    • 著者名/発表者名
      中野満寿男
    • 学会等名
      平成27年度京都大学防災研究所共同研究集会「台風研究会」「複合系台風災害のメカニズムに関する研究集会-気象学・海洋学・海岸工学・ 土木工学・建築工学・生態学を交えて-」
    • 発表場所
      京都大学防災研究所
    • 年月日
      2015-11-01 – 2015-11-01
  • [学会発表] 鉛直シア下で急発達する台風の進路予報誤差2015

    • 著者名/発表者名
      山口宗彦
    • 学会等名
      日本気象学会2015年度秋季大会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-10-30 – 2015-10-30
  • [学会発表] アンサンブル予報を用いた簡易予報感度解析2015

    • 著者名/発表者名
      榎本剛
    • 学会等名
      日本気象学会2015年度秋季大会「極域・寒冷域」及び「観測システム・予測可能性」 合同研究連絡会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-10-28 – 2015-10-28
  • [学会発表] 現業予報モデルを用いた予測可能性研究2015

    • 著者名/発表者名
      榎本剛
    • 学会等名
      日本気象学会2015年度春季大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2015-05-21 – 2015-05-21
  • [学会発表] 夏季の北西太平洋域における台風発生予測可能性2015

    • 著者名/発表者名
      中野満寿男
    • 学会等名
      日本気象学会2015年度春季大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2015-05-21 – 2015-05-21
  • [備考] 台風の進路予測の変動メカニズムの解明

    • URL

      http://www.dpac.dpri.kyoto-u.ac.jp/qthoren/projects/tctrack

  • [備考] TIGGE museum

    • URL

      http://gpvjma.ccs.hpcc.jp/TIGGE/

  • [備考] 2015年(平成27年)の台風について

    • URL

      http://www.jma.go.jp/jma/press/1512/21e/typhoon2015.html

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-02-16  

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