研究課題/領域番号 |
26282112
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前田 潤滋 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 名誉教授 (40128088)
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研究分担者 |
野田 稔 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (30283972)
友清 衣利子 熊本大学, 大学院自然科学研究科(工), 准教授 (30346829)
竹内 崇 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80624395)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自然災害予測・対策 / 竜巻被害 / 竜巻気圧降下 / 風力のオーバーシュート現象 / 竜巻の内部構造 |
研究実績の概要 |
1.前年度構築した「無風下で建物模型周りに急激な気圧降下を発生させる実験装置」を使用して,建物模型内側の気圧変化に及ぼす「模型容積の大きさと模型開口量(隙間)との関係」について実験データを収集し,外気圧変化の伝達特性を明らかにした。また変動する模型内圧を再現する数値計算法が実験結果を十分に再現する精度を有することがわかった。 2.建物に対する風向角を変えて突風を作用させ,風向角が建物模型表面の風圧力の増大効果(オーバーシュート現象)に及ぼす影響を検討し,主として屋根の棟方向に対する45°の風向の時にオーバーシュート現象が顕著になることがわかった。さらに屋根小屋組部材への応力にもオーバーシュート現象が見られることがわかった。 3.LESモデルを用いた建物周りの流れシミュレーションから算定した模型表面の圧力分布が上記2の実験結果によく対応し,実験条件以外の建物の屋根形状や突風の風向角についても,建物の非定常風圧力を検討できる可能性を示した。 4.九州の広域高密度風観測システムの風速記録から、車輌形状物体にオーバーシュート現象を発生させる可能性がある突風を選出し,その突風の発生頻度がFechet分布で最も良く近似できることを確認した。この確率密度分布からオーバーシュート風力を求め,同じ風速であっても突風時には定常風力の1.1倍となる非定常風力が発生することがわかった。 5.移動する竜巻状流れを発生できるように新たに工夫した装置を用いて,移動中の竜巻状流れ場の時空間構造を調査した結果,地表付近の渦中心が竜巻の移動方向の反対方向に移動し,台風時の危険半円に相当する「静止竜巻の風速場+移動速度以上の風速域」が形成されることを明らかにした。併せて竜巻風洞の数値流体解析を実施し,実験と同様の傾向を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・建物の密閉度(隙間)を再現する模型の工夫により,実際の建物に対応した状況での気圧伝達特性の評価が可能になった。また新たな工夫を加えた「空気塊の運動方程式」による,急激な外気圧降下による室内圧の伝達状況の数値解析の結果が予想以上に実験結果によく対応し,実スケールの建物への展開が可能になった。 ・突風の風向角による風圧力のオーバーシュート現象の特異性が新たに明らかになり,この突風風力を受ける小屋組構成部材の応力計算がより実際の状況に対応できるようになった。 ・これまでの確率モデルよりFechet分布のほうが実際の突風発生状況によく対応していることの発見は突風発生頻度の予測モデルなど,新たな展開が期待できる。 ・移動式竜巻風洞による実験および数値流体解析により,移動中の竜巻状流れ場が台風時に見られる危険半円に類似の分布を有することの発見は,台風通過経路と建物の位置関係による突風被害予測に重要な情報になると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
・新たな工夫を取り入れた「空気塊の運動方程式」を実際の建物スケールと密閉度を有する建物モデルに適用して,竜巻通過時の急激な気圧変動による建物への負荷荷重の計算手順のルーチン化を目指す。 ・竜巻通過時の風力のオーバーシュート現象を風向変化を考慮することによって,建物への負荷荷重の経時変化を追跡できる。 ・AMeDASなど気象官署での突風記録を追加調査して,より広地域・公範囲での突風の発生状況をの確率モデルの視点で分析する。また,車輌形状物体以外の構造物に作用するオーバーシュート風力の大きさや発生頻度を検討する。 ・移動中の竜巻の内部構造を竜巻の移動速度や最大風速半径などを考慮して,地表付近の任意の点における風速や圧力の時刻歴変化を表現する内部構造モデルを策定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
割引運賃等の利用により、研究打ち合わせの旅費支出が予想より低額に抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果のとりまとめのための研究打ち合わせを適宜行う。
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