研究課題/領域番号 |
26282116
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217548)
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研究分担者 |
齋藤 竜太 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10400243)
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 助教 (10447162)
大谷 清伸 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80536748)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医工連携 / 医療機器開発 / 外傷性脳損傷 / 高速度画像 / 衝撃波工学 / 薬剤デリバリー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一に微弱衝撃波が中枢神経系に与える影響を細胞レベルで検討すること、第二に、微弱衝撃波を用いた脳深部の精密治療技術開発に向け基礎的知見を得ることである。前者は、東北大学流体科学研究所 衝撃波学際研究拠点において申請者らが開発した衝撃波脳損傷モデルを含む実験系で評価を行う。後者は、本研究組織がわが国で初めて臨床応用を開始した脳内対流強化薬剤送達法を基盤とし、微弱衝撃波の印加による薬剤送達増強効果に関して非臨床(動物実験)での概念実証(proof of concept: POC)を確立する。 本年度は、生物光学的・工学的観点も踏まえて微弱衝撃波が中枢神経系細胞、脳血管に与える影響をマクロレベルから微小環境での現象解明を行った。本研究では頭部モデルとして、単純な二次元モデルを用いて、頭部と衝撃波の干渉模擬実験を行った。頭蓋骨を模擬した円筒内に、脳部を模擬したゼラチンを満たして円柱形状とした。衝撃波は、微小爆薬を起爆し発生する球状衝撃波を用いた。また、本研究では、PVDF ニードルハイドロフォンを用いてモデル内の圧力変動を測定した。 この結果、頭蓋内での衝撃波照射に際しては、一定以上の過剰圧の印加により、反対側に到達し、陰圧を発生するとともに、反射波が複雑な現象を引き起こし、膨張波、ならびに微小環境でマイクロジェットを含めた複雑な動態を引き起こすことが示唆された。 現在、さらに微小環境での可視化、圧測定を実施するとともに、実際にの模擬モデルにおいて薬液注入を行った際に、衝撃波照射により薬剤導入効果がどのように変化するかに関して可視化、圧測定を含めた効果判定を行うための実験系構築を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小爆薬起爆衝撃波の頭部モデル干渉挙動の連続影写真では、4 µs でゼラチン内へ二重になった衝撃波等の波が伝播し、反射した波はモデル外側のアクリル-空気界面で反射し、膨張波となり、ゼラチン中へ 透過して二重の波になっていた。その後、二重の波の 背後もアクリル中を往復する波によって複数の波を伴っており、12 µs 以降では、ゼラチン内を伝播した複数の波がハイドロフォン先端に到達しており、14 µs で対向側アクリル壁まで到達、一部は透過、反射をはじめ、アクリル内を透過した衝撃波がアクリル-空気界面で反射した膨張波によってゼラチン内対向側アクリル壁近傍で負圧となり細かな気泡が発生していることが確認された。また、反射した波がハイ ドロフォン先端付近に収束し、リバウンドによる球状の波が発生しており、収束点付近ではマイクロジェットのような尖った形状の気泡が認められた。 モデル内圧力の時間履歴からは、衝撃波の到達によって約11 µsで急峻に立ち上がった後、すぐに 負圧にまで低下し、その後振動していることが明らかとなった。これは可視化におけるゼラチン内を伝わる二重の波とその背 後の複数の波に対応している。初めの正のピークで約 16.5MPa、負のピークで約-4.0MPa であった。これは、対向側壁面で反射した反射衝撃波、および内部に透過した波がアクリル-空気界面で反射した膨張波によるものと考えられ、可視化結果とも一致していた。 現在、さらに微小環境での可視化、圧測定を実施するとともに、実際に模擬モデルにおいて薬液注入を行った際に、衝撃波照射により薬剤導入効果がどのように変化するかに関して可視化、圧測定を含めた効果判定を行うための実験系構築を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、模擬物質を用いた頭部モデルと微小爆 薬起爆衝撃波干渉の室内実験を行い、衝撃波が頭部モデル内を伝播する挙動を影写真法で可視化し、高速度ビデオカメラで撮影した光学可視化計測、およびモデル内部の圧力測定結果について一定の知見を得ることができた。 現在、さらに微小環境での可視化、圧測定を実施しており、微弱衝撃波が中枢神経系に与える影響を細胞レベルでの知見を次年度で得るべく現行の体制で推進する予定である。さらには、微弱衝撃波を用いた脳深部の精密治療技術開発に向け基礎的知見を得るために、実際に模擬モデルにおいて薬液注入を行った際に、衝撃波照射により薬剤導入効果がどのように変化するかに関して可視化、圧測定を含めた効果判定を行うための実験系構築を開始しており、知見が得られ次第、衝撃波照射装置のプロトタイプ開発と動物実験での検証を開始する予定ある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度微弱衝撃波による中枢神経系の薬剤送達増強効果を用いた新規の中枢神経系に対する精密医療技術の開発に向け基礎的知見を得るため工学的実験を行ったが、計画より低額で済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度微弱衝撃波照射装置開発、微弱衝撃波照射による薬剤送達増強効果の検討を行う際に動物実験を行うための実験動物購入として計画している。
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