研究課題
アルツハイマー病(Alzheimer's Disease; AD) は、認知症の原因として最も高頻度に見られる神経変性疾患の一つであるため、その早期診断、治療法の開発が現在切に望まれている。最近の研究で、AD患者の水晶体に脳内にも認められるアミロイドβ(Amyloid β; Aβ)が存在することがわかった。これをプローブすることにより、水晶体の検査でADを早期発見できる可能性がある。そこで本研究では,コヒーレント・ラマン散乱を用いた水晶体の分子イメージング装置を新たに立ち上げ、Aβの検出を目指した。研究期間内に新規白色レーザーを導入し、コヒーレント・ラマン散乱を含む複数の非線形光学効果を用いたマルチモーダル・非線形光学顕微鏡の構築を行った。さらに、倫理委員会の承認を得た上で、ヒト水晶体の測定を行い、水晶体表面近傍のラベルフリーex vivo断層イメージを得ることに成功した。研究期間内にAβ由来の分光学的指標を見つけることはできなかったが、白内障を含む水晶体疾患の新しい検査装置の開発に向けて、産学連携でさらに研究を進める体制を整えた。本研究で特筆すべきは、眼組織を可視化する本研究の過程で、偶然「線毛根」というオルガネラを可視化出来た点である。すなわち、本研究にて開発した装置の第二高調波というチャンネルで、微弱かつ多数のフィラメント状構造物を網膜視細胞にて見出した。そして、この信号がルートレティンというタンパク質に由来すること(分子同定)、さらにそれがフィラメント状構造をとったオルガネラ、すなわち線毛根を可視化していること(オルガネラ同定)を突き止めた。今後、用いるレーザーの低出力化等、低侵襲化の検討を進めることで、網膜変性疾患等の眼病診断等への展開が期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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