研究課題/領域番号 |
26282119
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田中 志信 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40242218)
|
研究分担者 |
小川 充洋 帝京大学, 理工学部, 講師 (30322085)
野川 雅道 金沢大学, 機械工学系, 助教 (40292445)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 尿成分計測 / 近赤外分光法 / 在宅ヘルスケア / 糖尿病 / 近赤外マルチチップLED |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度10波長まで絞り込んだ使用波長について、慢性腎症の進行予防に有用な指標である「尿素・クレアチニン比(U/Cr)」を得るための至適波長組み合わせについて検討した。その結果、各成分の濃度を4または5種類の波長で高精度(実測濃度と推定濃度との相関係数:γ>0.99)で推定可能な波長組み合わせを見出すことが出来た。このうち2波長は各成分で同一だったため実質「7波長」でU/Crを得ることができ、その精度もγ=0.904と極めて良好であることが確認された。 一方実用化への移行(光源のLED化)を考慮して近赤外マルチチップLEDを新たに試作し,グルコース,尿素の単一水溶液を用いて濃度推定の可否を検討した. LED試作に当たってはグルコース及び尿素の感度波長であり、かつ近赤外領域において水の吸収が最も大きな2,200nmをピーク波長とするマルチチップ(4個×6列)LEDを試作した.そして各成分の濃度推定に必要なLEDの光強度(換言すればチップ数)を明らかにすることで,他の波長の必要チップ数に関する知見を得ることを目的とた. 溶質としてはグルコース及び尿素を選び、それぞれの単一水溶液(10, 50, 100mg/dl)を調製し,各溶液の差分吸光度から重回帰分析により各成分におけるγを求めた。その結果、尿素では1列(4チップ)発光でγ=0.995という高精度が得られたのに対して、グルコースでは3列(12チップ)発光でようやくγ=0.669という結果となった。これらの結果は、2200nmが尿素の感度波長であるのに対して、グルコースにおいては感度波長ではあるもののモル分子吸光係数自体が尿素に比べ極めて小さいために濃度予測が難しかったと考えられ、多波長のマルチチップLEDの設計(波長選定)にこの結果を生かしていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の検討により、「研究実績の概要」に記述したように7波長という少ない波長数で慢性腎症の進行予防に有用な指標である「尿素・クレアチニン比」を高精度(相関係数:γ=0.904)で計測可能であることを確認すると共に、試作した波長2,200nmの近赤外マルチチップLEDにより単一水溶液ながら尿素及びグルコースの濃度推定の可能性を確認しており、LEDを光源とした簡易光学式尿成分計測システム具現化に向けて着実に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を受け、LED光源による簡易システム構築に向けて以下について検討していく予定である。 ①セル長の再検討によるグルコース低濃度領域の精度向上。 ②近赤外多波長マルチチップLEDを用いた単一成分水溶液の濃度推定精度検証と至適波長組み合わせの検討。 ③上記波長組み合わせによる尿中4成分(グルコース、尿素、クレアチニン、NaCl)の濃度推定精度検証。 ④近赤外多波長マルチチップLEDを用いた光学式簡易尿成分分析プロトシステムの構築。
|
次年度使用額が生じた理由 |
以下の理由により補助事業期間を延長することが望ましいことが明らかとなり次年度使用額を確保したため。 【補助事業期間延長理由】当初計画を進めた結果、これまで用いてきた0.5mmのセル光路長をさらに短く、具体的には0.05-0.025mm程度にすることで、低濃度領域(0-100mg/dl程度)における尿成分の濃度推定精度を格段に向上できることを見出した。なおこの知見は光路長可変セルを用いて得た結果であり、実用化のために当該光路長のフローセルを用いた多波長LED式簡易分光システムの試作と性能評価が追加で必要となったため。 【使用計画】様々な消耗品購入や学会での成果発表旅費等に使用する予定である。
|