研究課題/領域番号 |
26282120
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松本 健志 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (30249560)
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研究分担者 |
百武 徹 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20335582)
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん骨転移 / 生体医工学 |
研究実績の概要 |
近年の治療技術によってがん患者の生存期間が着実に延びる一方で,がん骨転移の有病率は増加し,骨破壊による高齢者QOLの低下が懸念されている.一方,全身性微振動(WBV)には破骨細胞活性を抑制する効果が報告され,がん骨破壊を抑制する効果が期待できる.本研究では,がんの骨破壊に対するWBV負荷の効果について,マウスがん骨転移モデルを対象に腫瘍血管の関与に着目して実験的な検討を行なった. BALB/cマウス(♀)の6週齢時に,乳がん細胞(4T1,100,000個)を右脚脛骨内へ移植し,Ctrl-2(n=10),WBV-2(n=9),Ctrl-4(n=14),WBV-4(n=13)の4群に分けた.移植3日後から,WBV-2,WBV-4には,WBV(0.3g,90Hz,20min/day)を与え,Ctrl-2,Ctrl-4はコントロール群とした.2週後(WBV-2,Ctrl-2)および4週後(WBV-4,Ctrl-4),安楽死後に直ちに左心室より血管造影鋳型剤を灌流し,脛骨を摘出した.試料は放射光(SPring-8)を利用したK吸収端サブトラクションCT(3.95μmボクセル解像度)によってイメージングした.成長板より1mm末梢側から2mmの脛骨領域およびその骨周囲300μm以内の血管を解析対象とした.溶骨および造骨作用が確認されたため,ミネラル密度分布に基づいて,造骨部と既存骨に分離した. Ctrl-2とWBV-2には既存骨量,造骨量,血管体積に差は見られなかった.これらは全て,WBV-4,Ctrl-4で減少するものの,WBV-4では既存骨の減少(溶骨作用の大きさ)はより顕著であり,血管体積の減少も緩やかであった.両群データの血管体積-既存骨体積のプロットは有意な負の相関を示した.これらの結果より,WBV負荷は骨溶解を増強し,これには骨転移の循環動態が関与していることが窺われた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4T1細胞の骨転移悪性度が予想以上に高く,文献に基づく移殖細胞数ではWBVの効果が検出しにくいと考え,移殖数を1/5に変更することとした.当初の予想とは異なった結果になっているが,計画はほぼ予定通りに進行している.
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今後の研究の推進方策 |
骨転移巣の経時CT観察,生化学分析,組織学的観察を加え,がんの骨破壊に対するWBVの効果を多角的に検証する. <インビボ観察> WBV群(0.3g,90Hz,20min/day)と非WBV群のマウス(Balb/c,♀,各10匹)について,低被曝位相コントラスト法による骨転移巣のインビボCT計測(6μmボクセル)をSPring-8にて行う.マウスの脛骨内には乳がん細胞(4T1,2×10^4個)を移殖し,その3日後より付加実験を開始する.CT計測は負荷開始日より3週間,1週おきに計4回実施する.使用エネルギーは33.4keVとし,投影数600,被曝量は3Gy/scanである. <生化学的評価> WBV負荷修了時に採血し,血清を得る. EIAあるいはELISAによって,骨形成マーカー(骨型アルカリフォスファターゼ:骨型ALP),骨吸収マーカー(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ:TRAP)および骨転移腫瘍マーカー(I型コラーゲン架橋N-テロペプチド)を測定し,骨代謝・腫瘍悪性度を評価する.また,骨腫瘍巣の切片試料について,骨型ALP/TRAP染色(骨芽細胞/破骨細胞標識)による組織学的な骨代謝評価を行う. また,WBV負荷による腫瘍微小循環への影響について数理モデル論的にアプローチし,その骨破壊への関与について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
4T1細胞の無償提供により,マウス実験モデル作製に掛かる費用が減じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
主にSPring-8利用料に充当する予定である.
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