研究課題
本研究では、心筋の伸展刺激に対する反応における生理的な活性酸素(ROS)の役割と不全心へとつながる病的なROS機能との関連性を明らかにする。前年度までに我々は伸展に対する生理的な反応としての急性のNOX2によるROS産生にTRPC3チャネルと電子伝達系を介したミトコンドリアの伸展刺激誘発性過分極が関与していることを明らかにした。本年度は不全心での伸展に対する反応とROS機能の関連を明らかにするために、圧負荷モデルとして横行大動脈縮窄術(TAC)による肥大心マウスを、容量負荷モデルとしてドキソルビシン(DOX)投与による拡大心マウスを作製した。その心筋細胞を単離し、伸展刺激誘発性のミトコンドリア過分極およびROS産生を調べた。その結果、TACマウス心筋においては伸展によるミトコンドリア過分極とROS産生増加はともに観察され、コントロール群との差は見られなかった。一方でDOXマウス心筋においては伸展によるミトコンドリア過分極は消失したが、ROS産生増加は観察されたため、DOXマウスではミトコンドリアが障害され、ROS産生はミトコンドリアを介さない別経路のNOX活性化によるものと思われた。また、コントロールマウスでは伸展刺激時と1Hzの電気刺激(ミトコンドリアを刺激)、およびそれらの同時刺激においてもROS産生増加量に差はなかったが、DOXマウスでは同時刺激により有意にROS産生量の増加量が多かった。このことから容量負荷時にはミトコンドリアとNOXのクロストークに異常が生じることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Physiological Sciences
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doi:10.1007/s12576-016-0519-3