研究課題/領域番号 |
26282128
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
亀井 保博 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, 特任准教授 (70372563)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 補償光学 / 遺伝子発現 / レーザー / IR-LEGO / 温度計測 / 熱ショック / 顕微鏡 / 波面センサー |
研究実績の概要 |
生体内に存在する屈折率の異なる物質による光の擾乱により生体深部における像の劣化が起こる。生物学研究においては今後、より深部、より高い解像度が要求されるため、「補償光学」を顕微鏡に適用する。さらに、顕微鏡は「観察」が主目的ではあるが、近年発展してきたオプトジェネティクスや、生体内の局所的遺伝子発現法など、光による生体・細胞を「操作」する技術へも発展している。補償光学系はこれらの光操作のための照射系顕微鏡光学系にも適用可能であり、本研究課題では、局所遺伝子発現顕微鏡(IR-LEGO)に補償光学を応用し、生体の深部細胞でも効率良く遺伝子発現が可能な系へと高度化することを目的として研究を進めている。本年度は「広視野1点補償系による観察系強化と、照射系への改造」をまず行った。「ガイドスター(参照輝点)」により出た光は、生体組織・細胞を通過する際のズレによる像ボケ(解像度低下)を起こすが、瞳面で分割し、各分割位置の波面の傾きを「波面センサー」で捉えてこれを元に戻るように分割ミラーデバイス(可変形鏡)で補償することで点像へ戻し、光学限界に近い解像度をもたらす。これまでの研究では「蛍光ビーズ」をガイドスターとして補償を行ってきたが、生体のどこにでもビーズを非侵襲的に配置することは難しい。そこで、可視レーザーを導入して打ち込み、それによって生じる蛍光点を「人工ガイドスター」とするように改造した。この際、波面センサーに入る光量が低下するため、備品として高感度カメラを購入し設置した。またこのカメラを波面センサーとして使用するためのソフトウエアも作成した。また、同時に、今後の赤外レーザー集光改善を評価するための温度プローブを大阪大学の中野雅裕博士らと共同で開発し、主にメダカを使って生体内部に発現させて三次元温度評価(集光評価)を行うためのコンストラクトの作成まで進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度は主に補償光学系をレーザー入射系に改造し、波面センサーを高感度化することであったが、外注した駆動ソフトに関して予想外に時間を要したため駆動試験程度までしか評価できなかった。一方で、27年度に計画していた温度計測プローブの形質転換体作成を前倒しし、本年度末にトランスジェニック動物を作製するためのコンストラクトまで作成できた。以上のことから、本年度の達成度は総合的に「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
広視野1点補償系による観察系強化については、引き続きハード・ソフトウェアの両面から研究を進める。これはこれまで以上に植物での補償光学顕微鏡開発を共同で進めるグループなどの共同研究者との連携をとり、動物だけでなく、先に進めていた植物観察を含めてイメージングの結果をまとめて、論文の執筆・投稿を行う。また、平成26年度に作成した温度計測プローブを発現させるトランスジェニックメダカの作成を進め、27年度半ばには系統を樹立し、赤外レーザー光学系を導入し、集光効率の向上の確認を行う。26年度に多少遅れた波面センサー駆動確認に問題がなければ、28年度に予定しているスキャンタイプへの設計に関しても進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助者として雇用していた者が出産のため産休をとったため。一部実験は前倒しで実施したので、大きくは予定からずれていないが、多少の次年度使用額がでた。
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次年度使用額の使用計画 |
特に大きな金額ではないため実験の進捗により有効に利用する。
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