研究目的)現在、製剤開発において薬剤の難水溶性化が進んでおり、難水溶性に起因するバイオアベイラビリティ低下の問題を改善できるDrug Nanocrystal(ナノ結晶製剤)への関心が急速化している。本研究課題では理論計算化学によるアプローチを新規導入した高性能・高品質の次世代型ナノ結晶水分散製剤開発を行う。本年度の知見は以下である。一般に、特にステロイド系点眼液の点眼に際しては、点眼後、眼圧が上昇するリスクが知られている。眼圧上昇は網膜視神経細胞にダメージを与え、緑内障を引き起こす一因として問題視されている。そこで我々の作製したステロイド系ナノ結晶点眼液における、眼圧変動に関する動物実験等の検証をまとめた結果、眼圧の上昇は見られなかった。ナノ結晶点眼は眼内移行性が高まることが、我々の研究により明らかになったが、同時に、眼圧上昇が生じないことは、ナノ結晶点眼液の有効性を明らかにしたといえる。一方で、ナノ結晶点眼液は、ナノ結晶が水中に分散した状態で得られるが、ナノ結晶点眼液を作製する上での問題点も明らかとなってきた。ナノ結晶の水分散安定性の問題である。ナノ結晶は水中で結晶成長を生じる傾向があり、その結果、ナノ結晶がバルク結晶となり沈澱する傾向がある。この結晶成長の抑制を目的として様々な分散剤等の添加物の添加を試みた。その結果、多くの分散剤は結晶成長抑制にあまり効果を示さなかったが、ある特定の分散剤は効果的に結晶成長を抑制することが分かってきた。これらの知見は今後のナノ結晶点眼液の開発に有効であると考える。本研究課題で得られた成果は論文投稿予定である。
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